「痛み入ります」の正しい意味とビジネスシーンでの使用例を解説
ビジネスシーンにおいて、「痛み入ります」と言われ戸惑った経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。相手に感謝を伝える言葉はたくさんありますが、その一つが「痛み入ります」という言葉です。では、この「痛み入ります」とはどのような意味で、どういった場面で使うと適切なのでしょうか。 今回は、「痛み入ります」の正しい意味とその使用例を解説します。
- 「痛み入ります」の正しい意味は?
- 「痛み入ります」の語源
- 「痛み入ります」を使えるビジネスシーンと例文
- 特別に便宜を図ってもらったときの使用例
- 慶弔時の心遣いに対しての使用例
- 皮肉に捉えられる場合がある
- 目上の方に対しても、活用シーンは注意する
- ①恐れ入ります
- ②かたじけなく存じます
- ③恐縮です
- ④お心遣いに感謝いたします
- ⑤ありがたく存じます
- ①とんでもございません
- ②お気になさらずに
- ③滅相もありません
- ①使う相手を考え、取引先や上司など目上の人に対しても、使用シーンを考える
- ②日常的によくある感謝には使わない
- ③過去のことには使用しない
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「痛み入ります」の正しい意味は?
「痛み入る」とは、「いたみいる」と読み、相手の親切・好意にひどく恐れ入る、恐縮するという意味の言葉です。相手からなにかしら便宜を図ってもらった時や、手助けを受けた時に、相手へ感謝する気持ちやありがたく思う気持ちを表現するために使われます。
その「痛み入る」の語尾に丁寧語の「ます」をつけて「痛み入ります」という敬語の形で使うのが一般的。同じ感謝を伝える言葉でも、「ありがとうございます」とはニュアンスが異なり、「自分にはもったいないほどありがたい」という気持ちを含んでいるのが特徴です。使用シーンが多くない言葉だからこそ、実際に使う状況になった時や誰かから言われた時に誤った使い方や返答をしないよう、きちんと理解をしておきましょう。
「痛み入ります」の語源
「痛み入ります」の語源は、「もったいない」「申し訳ない」という心の痛みを表す「痛み」と、深く感じ入る「入る」から成り立っていると言われています。
「痛む」は古語において「苦痛に感じる」「深く感じる」という意味です。鎌倉時代に成立した『松浦宮物語』では、世の乱れに憂いを感じるという一説に「いみじういたみ思ふべき」という表現が使われています。
また、「~入る」は『源氏物語』において「いみじう泣きいりつつ (この人も、なおさら、たいへんひどく泣きながら)」、『宇治拾遺物語』では「幼き人は寝いり給ひにけり(幼い人はすっかり寝てしまわれたのだ)」と使われているように、多く動詞の連用形に接続して「すっかり~する」という意味で用いられています。
「痛み入ります」を使えるビジネスシーンと例文
「痛み入ります」は、日常生活ではほとんど使うことがなく、主に職場の上司や仕事上での取引先などの目上の人間に対して使います。では、どのような場面で使うのが適切なのか、「痛み入ります」の使用例を見ていきましょう。
特別に便宜を図ってもらったときの使用例
まずは、特別に便宜を図ってもらったときの使用例を見てみましょう。
相手からなにかしら良いように取り計らってもらった際や、手助けを受けた際に、「~痛み入ります。」とお礼を述べる際に使うのが一般的な使い方になります。特にビジネスシーンにおいて、目上にあたる上司や取引先の人に対してのお礼に、「痛み入ります」の言葉を使うことで、心から感謝しているという気持ちを伝えることができます。
【例文】
- 温かいお心遣い痛み入ります。誠にありがとうございます。
- 多大なるご厚意をいただきまして、痛み入ります。
このように相手のどのような行為に対してありがたいと感じているかを伝えることで、より具体的に感謝の気持ちを表現することができます。
慶弔時の心遣いに対しての使用例
慶弔時、特にお悔やみのシーンにおいても使われることがあります。この場合は、弔問客の参列や心遣いに対して、「ありがとうございます」に代わる感謝を述べる言葉として使われます。相手の配慮に対して、感謝だけでなく恐縮しているという心情を伝える意味合いがあります。
対面以外にも、例えばお悔やみメールの返信において、「早々にご丁寧なお悔やみ 痛み入ります。」と一言添えるとより丁寧な気持ちが伝わります。
【例文】
早々にご丁寧なお悔やみ、痛み入ります。
故人に代わりまして厚く御礼申し上げます。
本来ならば直接参上して御礼を申し上げるべきところ、メールでの失礼をどうぞお許しください。なお、お忙しいことと思いますので返信はご無用でございます。
「痛み入ります」を使用する上での注意点
「痛み入ります」は丁寧な表現である一方、意味を誤解されやすい言葉でもあります。丁寧な表現として発したつもりでも、状況によって相手に正しく伝わらない場合があります。では、どのような点に注意して使うべきなのでしょうか。
皮肉に捉えられる場合がある
「痛み入ります」という言葉を使う時の注意点として、あまり使用シーンが多くない言葉であるがゆえ、「嫌味」に取られやすいということがあります。特に、対面で直接話す場面などでは、違和感として相手に強い印象を与えてしまいかねません。
これは、本来の「相手の好意や親切に恐縮する」という意味ではなく、「アドバイスしてくれなくてもわかっている」という意味で相手に対して使う場合があるからです。
そのため、使い方やシーンを誤ると、嫌味として受け止められてしまうこともあります。メールなどの文面においては、相手に丁寧な印象を与え、「痛み入ります」という言葉が適切である場合が多いので、口頭より文章で使う方が良いかもしれません。
目上の方に対しても、活用シーンは注意する
もう一つの注意点は、感謝の気持ちを明らかに表現しているとき以外は使わないようにすることです。目上の方に対して使うことが多い表現であるため、気をつけましょう。
「痛み入ります」は「恐れ入ります」とは違い、恐縮しているという気持ちだけでなく、心が痛むくらいという意味合いも含まれているので、使うシーンを考えないと、不快感を相手に与える場合があります。
たとえば、「ご丁寧に痛み入ります」と伝えたときに、意図と反して失礼であると思われることがあります。そのため、「痛み入ります」は「お心遣い痛み入ります」などというように感謝の気持ちを明らかに表現するときだけ使って、これ以外は言い換える方が無難です。
「痛み入ります」の類義語
ここまで述べたように「痛み入ります」を使うのは、心が痛いほど感謝している場合です。状況によっては、他の表現の方が適していることもあるので、言い換えられる類義語も押さえておきましょう。
①恐れ入ります
「痛み入ります」と同様の意味を持つ言葉として「恐れ入ります」があります。「恐れ入ります」は「相手の好意に対して感謝する」、「相手に迷惑をかけたことに対して申し訳なく思う」という意味を持つ言葉です。
「痛み入ります」という言葉も、「恐れ入ります」という言葉も、相手の好意に対して感謝するという点で同じような意味と言えます。強いて違いを挙げるならば、「痛み入ります」はその言葉通り「心が痛むほど感謝している、申し訳なく思う」というニュアンスで、「恐れ入ります」は「恐縮するほど感謝している、申し訳なく思う」という違いがあります。
そのため、感謝したり申し訳なく思ったりする度合いでは「恐れ入ります」よりも、「痛み入ります」のほうが強い表現と言えるでしょう。
②かたじけなく存じます
「かたじけなく存じます」は、「かたじけない」という「相手に対する恐恐れ多さ」の単語を含む表現で、「ありがたい」や「恐れ多い」などの意味を持ちます。これにニュアンスが近いのは「申し訳ない」や「恐縮です」などが挙げられます。
また、「存じる」は、「思う」の謙譲語表現で、上司や取引先など目上の人へ使うのが適切な言葉です。たとえば、「こちらの不手際にも、そつなくご対応いただきまして、かたじけなく存じます。」など、相手に申し訳なく思うような場合に、「かたじけなく存じます」と表現するのが良いでしょう。
ただし、会話などの口語表現ではあまり使われないため、過剰な敬語表現と受け取られないように、注意して使用する必要があります。
③恐縮です
「恐縮です」は、同じ漢字を使う「恐れ入ります」と同じく、相手の懇意や配慮を受けたことに対して、恐れ多い気持ちを表したいときに使います。
そこまで大きくない支援や配慮などにも使用しやすい表現のため、「痛み入ります」に比べると使用シーンが多いでしょう。たとえば、相手に頼みごとをする場合、時間や手間をかけて申し訳ないという気持ちを伝える場合です。
「こちらの無理なお願いにつきましてもご了承をいただきまして、恐縮です。」「迅速にご対応いただきまして、恐縮です。」などのように使います。
また、目上の人からの依頼や誘いを断る際、直接的に伝えると悪い印象を与えかねないため、「恐縮ですが」と前置きし、丁寧さを表現する場合に使うこともあります。
④お心遣いに感謝いたします
「お心遣いに感謝いたします」は、他人の気配りや努力に対して、深い感謝の気持ちを伝える際に使用する表現です。
尊敬語であり、目上の人や取引先に対して使用できますが、フォーマルでやや固い印象を与えます。そのため、メールやビジネスチャットなど、文面で感謝の意を述べる際に活用するとよいでしょう。
「定期的な業務報告をいただきありがとうございます。お心遣いに感謝いたします。」「細やかなお心遣いに感謝いたします。」このように使うのが適切です。相手の心遣いをしっかりと認識していることを伝えることができるでしょう。
ただし、無闇に使用すると、誠実さが欠けると受け取られることもあるため、あまり頻繁に使うのは避けましょう。
⑤ありがたく存じます
「ありがたく存じます」も感謝の気持ちを表す言葉です。
「ありがたい」の語源は、「有り難し」と書き、存在が珍しいことや、貴重なことです。仏教では「めったに起こらない良いことは仏様の恩恵である」と考えられており、「有り難い」は存在が珍しいことから感謝を表す言葉へと変化したのです。さらに「思います」の謙譲語である「存じます」をつけて、ありがたく思う気持ちを丁寧に表現した敬語表現といえます。
口頭でも使うことはできますが、かしこまった表現となるため実際にはメールなど文章で使用することが多い言葉です。「ありがたく存じます」も他の表現と同じく、多用しすぎると軽々しく受け取られてしまうため、使う頻度には注意しましょう。
「痛み入ります」への返答は?
では、部下などから「痛み入ります」と言われた場合はどのように返答するのが良いのでしょうか。咄嗟でも、正しく返答ができるようにチェックしておきましょう。
①とんでもございません
「とんでもございません」は、滅相もない、とんでもない、という意味合いをもち、相手の言葉に対して謙遜の意味を示すことができる表現です。「とんでもございません」には、「お礼には及びません」といった意味も含まれており、スマートな受け答えといえるでしょう。
また、こちらからも、相手に対して日ごろの感謝を述べたい場合には、「とんでもございません」に続けて、「こちらこそ、いつもご配慮いただきありがとうございます」と付け加えるとより丁寧です。
「痛み入ります」と声をかけられた場合は、自分が行ったことに対して、「ありがとうございます」以上の感謝の言葉をかけてくれたということなので、相手への敬意を込めながら返答するように心掛けてください。
②お気になさらずに
近い間柄の相手であれば、「お気になさらずに」も使うことができます。この場合も、「お気になさらずに。こちらこそ、お気遣いをいただきありがとうございます」と相手を気遣う一言を付け加えるとより丁寧な返答になります。
「お気になさらないでください」は心などの状態の働きのことを意味する「気」に、接頭語の「お」、するの尊敬語「なさる」の否定形の「なさらない」、「くれ」の丁寧語の「ください」が合わさった敬語表現です。正しい敬語表現であり、相手に良い印象を与えることができます。
ただし、「とんでもございません」に比べると関係が近い相手向きの返答になるので、使う相手との距離感を考えて使うのが良いでしょう。
③滅相もありません
「滅相もない」とは、「そんなことはありません」「まだまだですよ」と謙遜を意味する敬語表現です。そのため、相手が自分のために言ってくれたことを否定したいときに使います。否定といっても強く否定したり拒否したりするのではなく、自分の立場を考えてへりくだって使うところがポイントです。
たとえば、取引先など自分にとって敬いたい相手であるにも関わらず、相手が謙遜して「痛み入ります」と言われた場合に、返答として「滅相もありません」を使うと良いでしょう。「滅相もありません」は、自分にはもったいないような言葉を言ってもらったという、謙虚に否定するニュアンスが強いため、話の流れや相手との関係性をみて適切に使うようにしてください。
「痛み入ります」の間違ったNG使用例
ここまでお伝えしてきたように「痛み入ります」は恐縮するほどの感謝を表す言葉なので、間違った使い方に注意しましょう。
①使う相手を考え、取引先や上司など目上の人に対しても、使用シーンを考える
先に紹介した通り、「痛み入ります」を使う相手は目上の人限定です。ただし、場合によっては皮肉や嫌味に聞こえる場合もあります。特にメールでは注意が必要です。お客様にも使用は控えたほうが無難といえます。
②日常的によくある感謝には使わない
「痛み入ります」は多用する言葉ではないため、あまり頻繁に使うと不快感につながる場合があります。
③過去のことには使用しない
「痛み入りました」のように過去形では使わないようにしましょう。
「痛み入ります」は丁寧に感謝を伝える言葉
本記事を通じて、「痛み入ります」の意味や正しい使い方、言い換えの表現や、返答の仕方などについて紹介しました。適切に使用できれば、相手への感謝の気持ちを伝えられ、よりよい関係構築の一助となるはずです。ビジネスシーンにおいて、社内・社外問わず円滑なコミュニケーションを取れるというのはスキルの一つです。
正しい言葉遣いを習得し、自分のスキルアップとキャリアアップにつなげてみてはいかがでしょうか。
2021年にSYNCAのカスタマーサクセスとしてWARCにジョイン。コーポレート領域に特化し、求職者の転職支援から企業の採用支援の双方に従事し、BizDevとしても機能の企画立案などに携わる。