ノウハウ

簿記資格を活かせる仕事とは?それぞれの級ごとの難易度も解説

栗田 謙人
更新日:2023/08/30

「簿記の資格を取るか迷っている」「簿記の資格をとって仕事に活かしたい」漠然と簿記の資格は取った方がいいと考えてはいても、実際に資格を取得した後どのようにしたらいいか分からない人もいますよね。せっかく資格を取るなら活かしたいものです。

この記事では、簿記の資格を取った後にどのように仕事に活かせるかについて解説します。

目次
  • 簿記とはどのような資格?
  • 簿記の資格を取得するべき理由 
    • 会社の規模や種類に問わず簿記を用いて帳簿をつけるため
    • 公認会計士や税理士の資格を取得するためにも必要なため
  • 簿記の資格が活用できる主な仕事3選
    • 会社の財務・経理の仕事
    • 会計事務所・税理士事務所
    • 記帳代行
  • 簿記の仕事はAIによってなくなる?
  • 簿記資格を取得するメリット
    • 昇給や昇格につながる
    • 就職・転職で有利に働くことがある
    • 会社の財政状況が把握できる
  • 級別・簿記の取得難易度
    • 簿記3級の取得難易度
    • 簿記2級の取得難易度
    • 簿記1級の取得難易度
  • 簿記の資格を取得して、仕事に活かしていこう
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簿記とはどのような資格?

簿記とは、企業でのお金の流れを正確に記録し、経営実績や財務状況を把握し、分析する能力を証明する資格です。たとえば、企業やお店では商品や材料を仕入れたときや交通費などの経費の支出、従業員への給料の支払いなど、さまざまなお金が日々動いています。簿記では、基礎や原則、仕訳の方法、財務諸表の作成など、会計業務に必要なスキルを習得することができます。簿記の資格は、就職や昇進の際に有利になるだけでなく、独立して会計業務を行うことも可能です。

簿記検定には、「日商簿記」「全経簿記」「全商簿記」の3種類があります。

主催 受験者層 得られるスキル
原価計算初級 日本商工会議所 大学生・社会人 商業簿記の基本知識
簿記初級 日本商工会議所 大学生・社会人 商業簿記・工業簿記、財務諸表を読み解く力
3級 各地の商工会議所 経理や会計専門学校の学生 公認会計士や税理士の一歩手前のレベル
2級 全国経理教育協会 商業高校の学生 中規模会社で経理ができ、経営者が知っておきたいレベル
1級 全国商業高等学校協会 商業高校の学生 大企業で経理ができる
上級 全経簿記 経理や会計専門学校の学生 税理士受験資格を得られる

簿記のスキルで基本的で重要なことは「仕訳」であり、貸借対照表や損益計算書などの決算書は仕訳のルールに従って記載する必要があります。経理に携わるのであれば、必ず仕訳の仕組みを理解しておく必要があります。

簿記の資格を取得するべき理由 

簿記の資格を取得すべき理由について2つ解説します。

会社の規模や種類に問わず簿記を用いて帳簿をつけるため

簿記の資格を取得すべき理由のひとつは、会社の規模や種類に問わず簿記を用いて帳簿をつける必要性があるからです。

簿記は企業の財務状況を正確に把握し、経営上の意思決定をサポートします。たとえば、収支や資産の管理、財務申告、財務諸表の作成など、簿記の知識は企業を健全に運営していくうえで欠かすことはできません。お金の流れは全ての企業活動において関係しているため、必ず簿記を用いて帳簿をつける業務が発生します。

また、簿記の知識を持っていれば、正確な帳簿をつけるだけでなく、適切な財務戦略を立てることなどもできるようになります。

簿記の知識は一般的な企業の経理部門や税理士事務所、会計事務所などの職場で活かすことができます。ほかにも、取引先の財務状況を把握できるため、営業職としても役立つでしょう。簿記の資格があることで、簿記の知識やスキルを最大限に活かすことができるようになります。

公認会計士や税理士の資格を取得するためにも必要なため

簿記の資格を取るべき理由のふたつ目は、公認会計士や税理士の資格取得にも必要であるためです。公認会計士や税理士は、高度な会計・税務の知識を持ち、財務や税務の専門家としてクライアントをサポートします。

簿記の資格を持つことで、会計や財務に関する基礎的な知識を習得することができ、公認会計士や税理士試験に向けた準備を進めることができます。簿記の知識は、公認会計士や税理士試験の一部科目とも関連しており、試験合格に必要な基礎知識を学ぶことができます。

簿記の資格があれば、公認会計士や税理士として実務経験を積む際にも財務管理や経理事務を適切に補完できるため、より一層信頼できる会計の専門家としての地位を築くことができます。

簿記の資格が活用できる主な仕事3選

簿記の資格取得によって、財務諸表を読み解き、経営状態を把握できるスキルがある証明となります。一般的な「会社の財務・経理の仕事」だけでなく、会計業界である「会計事務所・税理士事務所」でも役立ちます。また、「記帳代行」といった仕事もあります。

簿記の資格を取得した後の仕事のイメージがしやすいよう、業務内容を確認してみましょう。

会社の財務・経理の仕事

会社の財務・経理の仕事は、どの企業においても仕事があり、企業規模に問わずニーズがあります。財務や経理担当として、日常的な帳簿管理、仕訳処理、財務諸表の作成などの業務を行います。特に資金の収支管理や予算策定、税務申告業務なども重要な業務です。

簿記の知識を活かして、会社の財務状況を適切に把握し、財務戦略の立案や経営者や役員への報告も行います。また、経理システムの導入や改善、内部統制の確立なども重要な仕事です。企業によって独自のやり方があるものの、根幹にあるのは簿記の知識であることは共通しているため、一度身につけたスキルは一生役にたちます。財務・経理の仕事は企業の経営に直結し、正確性と信頼性が求められるため、簿記の資格を持つことは特に重要です。

会計事務所・税理士事務所

簿記の知識は、会計事務所・税理士事務所でも大いに役立つことができます。こうした事務所ではクライアントの経理や税務関連の業務をサポートします。また、クライアントからの疑問や相談、提案なども行っていきます。

ほかにも、会計帳簿の管理、仕訳処理、財務諸表の作成を行います。また、税務申告書の作成や税務相談、税務調査対応も重要な業務です。

クライアントの財務状況を正確に把握し、税務上の優遇措置や節税策を提案する能力が求められます。また、法令の変更や税制改革の動向にも迅速に対応する必要があります。会計事務所や税理士事務所での勤務は、幅広い業種や企業と接する機会があり、財務・税務の専門性を高めることができます。簿記2級程度の知識とスキルがあれば、補助スタッフとして活躍することができます。

記帳代行

簿記の資格を活用できる仕事に記帳代行があります。記帳代行とは、企業や個人事業主の代わりに帳簿を管理し、簿記業務をサポートする仕事です。簿記の知識とスキルを活かして、日々の仕訳処理や帳簿の作成、財務諸表の整備などを行います。

事業を行っていると、領収書や会計ソフトへの入力などが日々発生します。しかし、経理を担当する人がいないときや、忙しくて対応が困難といった場合は、簿記業務を外部に委託することがあります。

記帳代行業務では、クライアントの要望や要件に合わせて帳簿を正確に管理し、税務申告や財務分析に必要な情報を提供します。また、税務の知識も必要とされるため、クライアントに対して税務面でもアドバイスを行うこともあります。記帳代行業務は、クライアントの簿記業務を効率化し、正確な帳簿管理をサポートする重要な仕事です。

簿記の仕事はAIによってなくなる?

簿記はAIによってなくなるのではないかと言われています。確かに、簿記の仕事はAIによって一部の業務が徐々に自動化される可能性がありますが、完全にはなくならないと考えられます。

なぜなら、AIは複雑な計算処理やデータ整理などを瞬時に効率良く行うことができますが、簿記業務には判断や解釈が必要な場面が必ず出てくるからです。たとえば、会計処理や財務分析、税務申告などの専門知識や判断力は人間の専門家に求められます。

また、クライアントとの信頼関係やコミュニケーションはAIでは代わることできず、人間の存在が不可欠です。しかし、将来的に伝票入力や単純な集計など簿記の知識がなくてもできる業務はAIに取って代わられていく可能性が高いです。

複雑な決算処理や財務分析などは人間が行い、より高度な専門知識が求められます。ただ、AIが進化しても簿記の仕事は人間の専門性と組み合わせながら共存していくことになるでしょう。

簿記資格を取得するメリット

簿記資格を取得するとさまざまなメリットが得られます。ここではどのようなメリットが得られるのか具体的に3つ解説します。

昇給や昇格につながる

簿記の資格を取得することのメリットのひとつは、昇給や昇格に繋がる可能性が高まることです。なぜなら、簿記を取得すると、財務管理や経営分析、日々の仕訳方法、経理で必要な知識やスキルがあることが証明できるからです。

これにより、企業内での信頼度が向上し、財務関連の業務や意思決定において重要な役割を果たすことができます。また、経営層や上司からの信頼を得ることで、業績評価や評価制度において優遇される可能性が高まります。

簿記の知識は、経理だけでなくほかの職種でも会計的な視点でビジネスを見ることができるようになり、大いに役立ちます。経済的な側面はもちろんのこと、職務上でのスキル向上にも繋がり、専門性を高めることでさまざまな業務に携わる機会を得ることができるでしょう。

就職・転職で有利に働くことがある

簿記の取得は、就職や転職において有利に働きます。なぜなら、簿記の知識とスキルは企業にとって不可欠であり、簿記の資格を持つことで、財務管理や会計業務に関する理解と実践力を証明することができるからです。

特に日商簿記は年間約50万人が受験する人気資格です。簿記の認知度は高く、転職先からも評価を得られやすい傾向です。財務管理や会計業務に関する理解と実戦力を示すことができれば、就職や転職活動の面接で競争力が向上し、求人市場で優位に立つことができます。

簿記の資格はさまざまな業界や職種で求められるため、幅広い選択肢が得られます。簿記の取得は自己成長と専門性の向上にもつながり、将来のキャリアパスにおいても強力な武器となります。

会社の財政状況が把握できる

簿記の資格を取得するメリットの最後は、会社の財政状況を把握できることです。簿記の知識とスキルを持つことで、企業の収支や資産、負債などの財務状況を正確に管理することができます。

これにより、会社の経済的な成長を予測し、経営上の意思決定や戦略立案を提案することができます。また、財務諸表の作成や分析により、収益性や効率性、リスクの評価なども行えます。

企業の財政状況を把握することは、資金調達や投資判断、予算策定などにも重要な役割を果たします。簿記の資格を持つことで、会社の財務データを正確に解釈し、財政状況を的確に把握する能力が認められ、経営者や関係者からの信頼を得ることができます。

級別・簿記の取得難易度

簿記の難易度は低い順に3級・2級・1級となっています。2020年12月から、3級・2級はネット試験も導入されました。統一試験とネット試験の難易度は基本的に変わらず、3級合格率は統一試験とあまり変わりません。2級はネット試験の方で合格率が高い傾向です。では、簿記の取得難易度について級別に解説します。

簿記3級の取得難易度

簿記3級は、初心者向けの簿記資格レベルで、小規模な株式会社の経理実務であり、簿記への入口的な資格となっています。商品売買業を対象とした商業簿記であり、基本的な会計用語や仕訳のルール、財務諸表の作成方法などを学びます。

合格率は、統一試験・ネット試験ともに40〜50%前後です。簿記3級に合格するための勉強時間は100時間程度とされています。ただし、簿記の基礎知識があれば100時間よりも短い時間で合格することも可能です。たとえば、商業高校出身や経理実務経験者などです。

日常的な会計業務の基礎を身につけることで、企業の帳簿管理や財務分析に貢献できます。簿記の基本的な知識とスキルを身につけ、実務での実践力を養うことが目的です。

実際に経理や会計事務所への就職・転職に活かすことは難しいですが、事務職の求人であれば簿記3級程度でも応募できます。

簿記2級の取得難易度

簿記2級は、より高度な簿記の資格レベルです。商業簿記に加えて、製造業を対象とした工業簿記を学びます。会計用語や仕訳ルールを深く理解し、財務諸表の作成や分析、経営管理や財務の仕事に精通することができるようになります。中級レベルの簿記知識とスキルを身につけることで、会計の実務において高い能力を発揮できます。

合格率は25%前後ですが、2020年11月では合格率18.1%まで下落しており、年々難易度が上がってきています。簿記2級に合格するための勉強時間は250〜350時間ほどと言われています。簿記の知識がなく独学で学ぶ場合は、それ以上の時間が必要になる場合があります。

簿記2級の資格取得は、企業内の経理部門でのキャリアアップや、会計事務所への就業の幅を広げるために重要です。実務を活かすのであれば2級取得は必須であり、求人も「簿記2級以上」を推奨しているところが多いです。

また、公認会計士や税理士の資格取得の前段階としても位置づけられています。簿記2級は、簿記の専門性を高めるために取得する価値のある資格です。

簿記1級の取得難易度

簿記1級は、最も高度な簿記の資格レベルです。複雑な財務諸表の作成や解釈、企業の財政状況の分析、内部統制の設計などを習得します。さらに、税務法や会計基準に関する知識も要求されます。

簿記1級を取得するための勉強時間は500〜1,000時間ほどです。合格率が低い理由は、出題4科目のうち、1科目でも10点に満たない科目があった場合に足切りがあるためです。苦手科目がある場合、総合得点が70点に届いても足切りを受けると不合格となるため、4科目全てを網羅する必要があります。

簿記1級を取得すれば、高度な会計知識や財務分析技術を身につけ、企業の財務管理や戦略的な意思決定に貢献することができます。また、公認会計士や税理士を目指す人のステップアップ的な立ち位置となっています。

企業の経営層やコンサルティング業務においても高い信頼性と専門性を持つことができます。簿記1級は、簿記のエキスパートとしての地位を確立するための価値のある資格です。

簿記の資格を取得して、仕事に活かしていこう

簿記の資格を取得することは、会計・財務分野でのキャリアを築くための重要なステップです。資格取得により、企業の帳簿管理や財務分析、税務申告などの業務を高い精度で遂行できます。

簿記の知識とスキルは就職や転職において有利に働き、昇進や昇給にも繋がります。さらに、公認会計士や税理士の資格取得にも必要な基盤となります。しかし、簿記の資格だけでなく、経験と実践を重ねることも重要です。

継続的な学習を続けながら実務を積み上げていくことで、会社やクライアントの財務管理に貢献する専門家として成長していくことができるでしょう。

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株式会社WARC HRtech CSマネージャー 栗田 謙人

2021年にSYNCAのカスタマーサクセスとしてWARCにジョイン。コーポレート領域に特化し、求職者の転職支援から企業の採用支援の双方に従事し、BizDevとしても機能の企画立案などに携わる。