ノウハウ

労務への転職希望者の自己PR作成ポイントを解説|例文もあわせて紹介

栗田 謙人
更新日:2023/08/28

労務は、従業員が安心して働ける環境を提供するやりがいのある職種です。それだけに、経験のある人ばかりでなく未経験からも、労務職への転職を希望する人は多いでしょう。

「労務に転職したいけど、何をアピールすればいいか判らない」「労務への転職を有利に進めるには?」などの疑問を持つ人のために、この記事では、労務への転職に有効な自己PRのポイントを紹介します。

ポイントを押さえ、ぜひ、労務への転職を成功させてください。

目次
  • 労務への転職希望者が自己PRを書く際に押さえておくべきポイント
    • ①目的や志向性を明確にする
    • ②自己分析を行う
    • ③過去の経験や実績をアピールする
    • ④コミュニケーション能力をアピールする
    • ⑤労務の業務内容に合わせたアピールを行う
  • 労務の自己PRに書けると有利になる経験4つ
    • ①新規制度の企画・導入経験
    • ②面接・採用プロセスの改善経験
    • ③労働トラブルの解決経験
    • ④社内研修の企画・運営経験
  • 労務未経験者が自己PRで書くべきアピールポイント4つ
    • ①人材育成に関する知識やスキル
    • ②コミュニケーション能力
    • ③分析力や問題解決能力
    • ④チームワークやリーダーシップ
  • 労務の自己PR例文を3つ紹介
    • 【例文1】人事・労務の経験者(1)
    • 【例文2】人事労務の経験者の場合(2)
    • 【例文3】人事・労務の未経験者の場合
  • 労務の特徴を理解し転職を成功させよう
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労務への転職希望者が自己PRを書く際に押さえておくべきポイント

労務への転職は、人事経験がある人や現役労務職の人材との争いになります。そのため、採用担当者がもっとも注目する自己PRは、採用を目指す人にとってとても重要なものです。ポイントを押さえて自分の価値を最大限に伝えることができる自己PRを、作成しましょう。

①目的や志向性を明確にする

まず最初に、労務に転職する目的や自分の志向性を明確にしましょう。具体的には、どうして労務職に就きたいのかという理由と、労務に転職してからのキャリアプランをどう描いているのかということです。

労務の仕事を通じて、今後、積みたい経験や身につけたいスキル・知識をはっきりさせ、将来はどういうポジションを目指すのかということを、採用担当者に具体的に伝えることにより、労務への転職を真剣に目指している姿勢が伝わります。

②自己分析を行う

また、自己PRを作成するにあたっては、自分の職務経験や得意な仕事内容、身につけている能力を書き出して整理することも重要。いわば、キャリアの棚卸しです。

労務は、勤怠管理や給与計算を行うとともに、福利厚生や労使間のトラブルの解決も行うポジションです。常に、会社の経営戦略を理解しながら、業務に当たっていかなくてはなりません。

棚卸ししたキャリアを再確認して、自分の性格や経験が、会社全体を俯瞰し従業員を客観的に判断することに役立つかどうかを把握しましょう。そして、労務の業務に活かせる自分の強みは何なのか、志望する企業にどうマッチし役立つのかを整理してみてください。

③過去の経験や実績をアピールする

自己PRでは、過去の経験や実績をなんとなく書き並べるだけでは効果がありません。労務の仕事をする上で、どう役立つのかというゴールを定め、厳選したものを説得力ある書き方でアピールしましょう。

例えば、従業員の勤怠管理を自動化するシステムを導入する際のプロジェクトリーダーを担当した経験や、クラウド型システムの導入により部署内のルーティン業務を自動化し効率化を実現した実績などです。
それらを単なる経験として書くだけでなく、具体的に削減した工数や時間、遂行に要した期間などを数値化してアピールすると、採用担当者の客観的な判断に役立つため、より効果的です。

労務経験者の場合は、従業員の福利厚生を改善して満足度を高めた経験や、IPOやM&Aの際に規則や制度を調整した経験、給与計算のアウトソーシングを導入し業務効率化を実現した実績などをアピールすると、他の志望者に差をつけることができるでしょう。

④コミュニケーション能力をアピールする

労務職に求められるコミュニケーションは、自分の考えを披露するタイプのものではなく、相手が求めていることを正確に聞き取り把握する能力です。「傾聴力」と呼ばれています。

労務は、従業員全員が安心して働ける環境を整備しなければならない仕事。そのため、従業員が会社に求めていることや、改善して欲しいと願っていることを、しっかりと聞かなくてはなりません。会社側の方針や主張も誤解なく聞き取ることが重要です。どちらも、相手の気持ちをおもんばかり、相手の立場になって理解・共感する姿勢が必要なのです。

さらに、従業員、会社の双方から聞き取った内容を、バランスよく吟味し、良い結果をもたらす調整能力も求められます。

従業員のヒアリングし正確なレポートを作成した経験や、それを活かして従業員も会社も納得する労働環境の改善や福利厚生を成功させた経験などを伝えられると、自分が、コミュニケーション能力が高く、調整力にも優れた人材だとアピールすることが可能です。

⑤労務の業務内容に合わせたアピールを行う

自分の知識やスキル、そして経験と実績をアピールする際には、それらが、労務の業務にどう活かせるかを考えましょう。

労務に求められるのは、丁寧に物事を考えて仕事を進めることができること、感情を入れずに冷静に物事を解決できる性格であることなどです。
人事が一人一人の従業員に個別に向き合うのとは違って、労務は従業員全体を対象にした制度設計や施策導入を担当します。ですので、個別の従業員に向き合う際には、客観的な人事考課の内容や、勤怠管理システムの数値やデータを元に、接することになります。

人事とは違って、人が好きだということはあまり高い評価ポイントにつながらないでしょう。むしろ、法令や規則に則り、改善や新制度の企画・導入を行う能力があることをアピールしなくてはなりません。

労務職の業務内容を把握し、アピールポイントを絞り込み自分が役立つことを伝えてください。

労務の自己PRに書けると有利になる経験4つ

人事経験者でもすべての経験が労務に有利だとは限りません。現在の労務の課題は、さまざまな雇用形態への対応、労働時間の管理の厳格化への対応、テレワークへの対応など、多様化しています。
さらに、DX化の流れもあり、労務業務の効率化も急務です。そのような中で、労務に転職する際に、有利に働く経験を紹介しましょう。

①新規制度の企画・導入経験

これからの労務に求められるのは、雇用形態の多様化や、在宅勤務などによる労働環境の変化に柔軟に対応し、新しい勤怠管理や福利厚生、給与計算などの環境を導入する能力です。

新しい制度の導入は、関連法令の知識がなくてはできませんので、制度の企画や導入の池件があると、一定の知識とスキルがあることを証明できます。

まず、自分自身の経験と実績の中から、制度設計と導入に関するものをピックアップします。そして、そのプロジェクトに自分がどう関わったか、どういう貢献をしたかを整理しつつ、新しい制度の成果を数値化して伝達できるように準備をしましょう。

②面接・採用プロセスの改善経験

面接・採用は、労務の仕事ではありませんが、その制度とプロセスを改善するのは、労務と人事が共同で行う業務です。

採用においては、応募者の能力やスキル、会社のビジョンへの共感や企業文化との親和性などを総合的に判断し、長期にわたって会社に貢献してくれる人材を選定する必要があります。
応募者がが自社で活躍できるかどうかを判断するためには、応募者の能力を客観的に判断する指標を検討することが重要です。能力評価シート等の製品を比較検討し、自社向けにカスタマイズし、テストを行い導入するという流れです。
前職までに、そのような採用プロセスの改善を行った経験があれば、そのノウハウは、他の労務業務にも役立てることが可能ですので、転職の際に有利に働くでしょう。

③労働トラブルの解決経験

労使間のトラブルは、企業にとって対応が難しいものの一つです。
従業員は、法令により守られている部分がありますので、労務担当は、従業員の要望や改善要求を受け入れながら、経営側との調整を行う必要があります。
労働トラブルを解決した経験は、労務担当として高い評価を得ることができます。

社会保険労務士を取得していると、従業員の要望にどの程度の法的根拠があるかを判断できるため、トラブルの解決に役立ちます。

④社内研修の企画・運営経験

労務では、人事が行う社内研修や、スキル取得の支援制度などの設計が必要になります。特に、従業員のスキルアップやキャリアアップにつながる講座や研修の支援策は、モチベーションやエンゲージメントの向上に繋がりますので大切です。

働きやすい環境を設計するとともに、従業員が望む自己研鑽を支えるのも労務の仕事ですので、研修を企画したり運営したりした経験は、評価されるポイントになるでしょう。

労務未経験者が自己PRで書くべきアピールポイント4つ

労務職は、専門的なものですので、実務レベルの知識とスキルが求められます。しかし、未経験者の転職が不可能な訳ではありません。労務の求人をチェックすると、求められるスキルや経験が理解できるでしょう。それらのポイントに従って、しっかりとアピールできれば、採用への道も開けます。

①人材育成に関する知識やスキル

労務職では、他の人事職と同様に人材育成についての知識と理解が重要になります。
従業員の労働環境を改善することとともに、従業員が望むキャリアアップを支援することも労務の業務だからです。

未経験者の場合は、組織設計や人材育成の専門的な知識などを学習することを薦めます。
人材育成は、総労働時間の短縮などに効果があり、労務管理にも役立つものです。
前職までの経験で、部署の新人教育のメソッドを策定した経験などがあれば、積極的にアピールすると良いでしょう。

②コミュニケーション能力

労務の仕事では、制度設計や福利厚生の改善などの業務で、従業員へのヒアリングを行うことがあります。また、制度の運用などでは、各部署の管理職とのコミュニケーションも必要になります。

そのため、しっかりと相手の話を聞く傾聴型のコミュニケーション能力は、労務の資質として重要視されます。

マーケティングや営業などの職種における、クライアントへのヒアリングや、コンシューマへのインタビューと共通するスキルですので、傾聴型コミュニケーションの経験と能力を持っている人も多いでしょう。未経験者にとって、傾聴型コミュニケーションのスキルを、実績と合わせてアピールすることは、労務への適性を伝える上で大変有効です。

③分析力や問題解決能力

労務の主要な業務の一つに勤怠管理があります。そこでは、残業時間などの数値を分析する能力が求められます。また、人事考課では、従業員の評価データを正確に読み取り、正当な評価を行わなければなりません。分析力と課題の発見、解決能力が、労務の業務に必要なのです。

未経験者の場合でも、営業やマーケティング、製造管理などの職種で、受注率やKPIの分析をしていたり、労働生産性を常時分析していたりと、分析力をアピールできる経験は役立ちます。

また、チームの課題を抽出し解決に導いた実績があれば、自分は問題解決能力の高い人材であるとアピールできることでしょう。

④チームワークやリーダーシップ

労務では、チームで業務にあたることが多いため、チームワークやリーダーシップが必要になります。人事・労務の未経験者でも、前職までに、チームリーダーやプロジェクトリーダーを担当した経験は役に立ちます。

チームワークの良さとリーダーシップを訴求する際には、具体的なプロジェクトの内容とともに、業務効率を向上させた経験などを客観的な数値とともに提示するのが良いでしょう。

例えば、チーム内で能力別に業務の分担をした結果、工数を10%削減することに成功した、というような具合です。具体的に改善された数値を提示することで、リーダーシップに優れているという根拠を示すことが可能です。

労務の自己PR例文を3つ紹介

最後に、上記の内容を踏まえた自己PRの例文を紹介します。経験者向けと未経験者向けとを掲載します。ご参考にしてください。

【例文1】人事・労務の経験者(1)

アパレル製造販売の○○株式会社に、営業職として2年、その後、人事部員として4年間勤務致しました。
人事部で最初の2年は、新卒採用を担当し、その後は人材育成と人事評価を担当しました。
人事に配置されてから、専門的な知識の必要性を感じ、セミナーや講座を受講し、関連する法令・規則の知識も身につけました。また、社会保険労務士の資格も取得しています。
前職の会社は、全国で60の店舗を展開していましたので、人事評価や給与計算に工数がかかりすぎることが課題でした。店舗責任者と本社人事の負担軽減のために、クラウド型の人事評価システムを導入することになり、プロジェクトリーダーを務めました。システムの比較検討から、導入決定、運用支援まで、5名のチームで担当しました。運用開始時には、各店舗責任者に対してWEB会議による研修を行いました。
システム導入の結果、店舗責任者が評価に費やしていた工数を60%削減、人事側の工数を50%削減することに成功しました。

以上のような経験から、従業員の労働環境の改善や新制度の導入などの分野でも、貴社のお力になれると考えています。

【例文2】人事労務の経験者の場合(2)

従業員1,400人の企業で、労務担当として3年間従事してきました。
給与計算業務にかかる工数削減という課題に、プロジェクトリーダーとして取り組んだ実績があります。給与計算のアウトソーシングとクラウド型の給与計算システムとを比較検討し、コストと工数の点で、アウトソーシング会社への外注を選択することを決定しました。複数の業者から提案を受け、工数削減のKPIを設定し稟議を通すことができました。
この改善では、勤怠管理や残業時間の算出も、外注先のシステムの活用により、効率化できました。結果として、給与計算に必要な工数を7割削減することに成功し、制度設計や福利厚生の改善など、調査や企画が必要な業務に工数を割くことが可能になりました。
また、勤務形態の多様化に伴い、福利厚生の抜本的な改革も担当。社食利用と同等の、リモートワーク時の昼食代補助などは従業員にも好評でモチベーションの向上につながりました。

以上のような実績は、貴社の労務でも存分に活かすことができると考えています。

【例文3】人事・労務の未経験者の場合

情報システムの法人営業をしていました。この2年は、チームリーダーとして担当クライアントに対する売上を30%伸ばしました。クライアント企業には、大企業もありましたので、求められる膨大な要件をヒアリングし、正確に把握する能力を養うことができました。
貴社のようなグローバルに展開されている大企業の労務では、多種多様な部署の従業員が働きやすい環境や福利厚生、人事評価システムを構築することが重要であると考えます。その点、状況を聞き出し調整する力はあると考えています。
プレイヤーではなく会社全体を俯瞰する労務という仕事を志望するにあたり、関連法令等も学習しております。〇〇のセミナーや〇〇の講座は、継続的に受けています。実務経験はありませんが、コミュニケーション能力と調整能力を発揮し、役に立ちたいと考えております。

労務の特徴を理解し転職を成功させよう

労務担当の募集は、それほど多くはありませんので、競争の激しい職種といえます。人事での経験がある人でも、採用や人材育成、評価などと、労務の業務とは、違うものですので、綿密な準備が必要です。

人事・労務の未経験者でも、労務に必要な会社全体の従業員の働きやすさを見る視点や、会社と従業員の間の調整をスムーズに行うコミュニケーション能力があれば、転職に成功することもあります。

バックオフィス職専門の転職サイト・SYNCAでは、労務職の求人情報も参照できます。企業によって求めるポジションや知識、スキルが違いますので、複数の募集を参照しながら、労務への転職を図るのが良いでしょう。労務に求められる条件を理解し、ぜひ、転職を成功させてください。

株式会社WARC HRtech CSマネージャー 栗田 謙人

2021年にSYNCAのカスタマーサクセスとしてWARCにジョイン。コーポレート領域に特化し、求職者の転職支援から企業の採用支援の双方に従事し、BizDevとしても機能の企画立案などに携わる。