広報とIR、どちらが向いてる?両者の 仕事内容の違いなどを比較分析
広報やIRに興味があるけど、仕事内容や違いがよくわからない」「未経験の自分にも転職できるのかな」。
本記事では広報やIRへの転職を考えている人や、現在広報とIRを兼任している人に向けて、両者の違いや特徴、業務に役立つ資格などについて解説しています。自分が広報とIRのどちらに向いているか理解し、転職に必要なスキルを身に付けましょう。
- そもそもIRとは?
- 広報とIRの違いは?
- PRと広報・IRの違いは?
- 社外広報
- 社内広報
- 決算説明会の運営
- 各開示情報の作成
- IRサイトでの情報発信、問い合わせ対応
- 広報のやりがい
- IRのやりがい
- 正確性と透明性を確保する
- 一貫性を維持する
- 開示要件を遵守する
- 投資家とコミュニケーションをとる
- 競合他社情報を把握する
- 安全性とセキュリティを確保する
- 広報・IRの年収は?
- 広報・IRの残業時間は?
- あると便利なスキル・資格は?
- 未経験でも広報・IRに転職できる?
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そもそもIRとは?
IRとは「Investor Relations(インベスター・リレーションズ)」の略で、株主や投資家に向けて、自社の経営や財務状況など投資判断に必要な情報(IR情報)を開示する活動です。「投資家向けの広報」とも呼ばれるIRの主な活動には、「有価証券報告書」などの資料の作成や決算説明会の運営、IRサイトでの情報発信などが挙げられます。
投資家はこうして得られたIR情報をもとに投資判断を行い、企業側もIRの促進によって株主と良好な関係を築き、円滑な資金調達に努めます。近年は、海外での日本企業の資金調達が進んでおり、外国人投資家の増加や情報開示への意識の高まりによってIRの重要性も増していると言えるでしょう。
広報とIRの違いは?
広報とIRは兼任されることも多く混同されがちですが、情報の発信先や求められる知識に違いがあります。
広報は社外の一般消費者やメディア関係者、そして社内の従業員に向けて企業の情報を幅広く伝えることが主な役割です。企業の方針やサービス、活動などの情報を発信し、企業のブランディングやイメージアップを図ります。
一方IRの役割は、社外の株主や投資家に向けて企業情報を継続して提供することです。広報がIRに関わる場合もありますが、IRには経営や財務に関する深い知識が不可欠であり、決算などで数字を扱うこともあるため財務部や経理部が担当するケースもあります。
広報とIRは「情報発信」という活動内容は共通していますが、このように情報の発信先や求められる知識、役割に違いがあると言えるでしょう。
PRと広報・IRの違いは?
広報やIRに似ている言葉に「PR」があります。PRとは「Public Relations(パブリック・リレーションズ)」の略であり、一般社会における自社のブランドやサービスの認知度を高め、イメージアップを目的とした活動を指します。
PRの主な活動内容
- 記事やプレスリリースの発表
- 自社メディアやSNSによる情報発信
- 地域イベントの開催
こうしたPR活動によって、取引先や地域住民などのステークホルダー(利害関係者)と良好な関係を築き、企業のイメージアップを図ります。
同じく情報発信を担う広報やIRとは、情報の「発信先」に違いがあります。広報は社外のメディア関係者や社内の従業員向けに、IRは株主や投資家向けに情報を発信します。PRは企業のイメージアップに向けて広く一般に働きかけます。
広報の主な仕事内容
広報とは自社と社会の人々との関係を築き、自社の認知度やブランド力を上げることが目的の仕事です。広報の仕事には主に「社外広報」と「社内広報」があり、それぞれの役割や業務内容も異なります。
社外広報
名前のとおり社外に向けて情報発信する「社外広報」は、主に以下の3つの業務があります。
- プレスリリース配信
企業経営や人事組織の変更、商品・サービスなど、自社の取り組みに関するニュースを社外のマスメディアに向けて発信すること。プレスリリース文書や関連資料の作成、それに伴う取材対応を行う。 - メディアリレーション(PR活動)
企業がメディアと良好な信頼関係を構築し、自社商品の魅力や認知度アップのためにPRしてもらう広報活動のこと。 - ブランディング
自社のブランドイメージを構築し、強化させる活動のこと。
これらの他にも、CSR活動やESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みや、自社メディア(公式サイト)の管理運営なども社外広報の業務として挙げられます。
社内広報
社内広報は「社内報の作成」など、自社の社員を対象とした広報活動です。企業の規模によって広報の担う役割は異なります。
たとえば大手企業では、全社イベントの企画や社員の家族に対する情報発信などを行い、社員同士のコミュニケーションの促進や情緒的繋がり、共通意識を持てるよう働きかけます。一方、規模の比較的小さな中小企業では社内での情報流通を高め、社員が最新の情報を入手して仕事に活かすことを目的として社内報の作成や社内伝達を行います。
社内広報は自社の企業理念やビジョン、メディアに掲載された記録など、自社の社会での取り組みや繋がりを組織全体で共有するための重要なツールと言えるでしょう。
広報も関わることがあるIRの具体的な仕事内容
IRは株主や投資家などに向けて、自社の経営や財務状況など投資判断に必要な企業情報を発信する役割を担います。ここからは、広報とも関わりの深いIRの具体的な仕事内容について解説します。
決算説明会の運営
決算説明会は、株主や投資家に対して企業の財務状況や経営戦略などを説明する重要なイベントです。広報も関わることがありますが、運営は主にIRが担当します。
決算説明会の運営は決算関連の報告書や資料作成のほか、株主・投資家の知りたがっている情報の適切な発信が求められます。その一方で、IRは自社の経営陣に対して株主や投資からの意見や要望などを報告します。
これらの仕事を通じて、企業と株主・投資家との信頼関係を構築し、維持することが重要です。
各開示情報の作成
IRは株主や投資家に対し、財務状況や業績などの情報を開示する「投資家向けの広報」の役割を担っています。IRの主な開示情報は以下のとおりです。
- 有価証券報告書
上場企業に作成が義務付けられている投資家向けの開示資料。企業の経営成績や事業内容、財務諸表などの情報が記載されている。 - 決算短信
企業の財務情報や経営状態に関する決算の要点をまとめた速報ベースの書類。経営成績や財政状態、業績予想などのサマリー情報が記載されている。 - 適時開示情報
投資家に対し、重要な企業情報を公平かつタイムリーに伝達する情報。上場企業に義務付けられている。 - 統合報告書
企業の財務情報と、企業統治や社会的責任(CSR)、知的財産などの「非財務情報」をまとめたもの。
IRによるこうした開示情報の作成は、企業が社会で公平に評価され、投資家やアナリストと建設的な対話をするために極めて重要な仕事と言えるでしょう。
IRサイトでの情報発信、問い合わせ対応
個人投資家らが電話やメールで問い合わせてきた際、迅速かつ適切に対応するため、IR担当者は自社の財務や事業状況などの情報を幅広く把握しておく必要があります。
また、IRサイトは株主や投資家に公平かつタイムリーに情報を発信するための重要なツールです。自社が「投資先」として選ばれる企業になるため、株主や投資家が求めている情報を漏れなく、正確に提供しなければなりません。IRサイトは頻繁に更新し、常に最新の状態にしておくことが重要です。
広報とIRの仕事、それぞれのやりがいとは
「企業の顔」として情報発信を行い、自社のイメージアップやステークホルダーとの関係を築く広報とIRには、どのようなやりがいや魅力があるのでしょうか。両者の仕事の大変さとやりがいについて解説していきます。
広報のやりがい
広報部は一般的に「管理部門」に所属し、社内外に対して幅広い広報活動を行っています。
他企業から見た広報担当者は「企業の公的な顔」として機能するため、自社のイメージを大きく左右すると言っても過言ではありません。
企業の評価を担うことはプレッシャーではありますが、地道な努力の末に自分が関わった広報キャンペーンが成功したときにはひときわ大きな喜びと達成感が味わえます。
社内外に大きな影響を与えられるため、この上ないやりがいを感じられるでしょう。
IRのやりがい
IRは業績や戦略などの企業情報を、株主や投資家に説明する役割を担います。企業情報を深く理解するには経営や財務、広報などの幅広い分野に精通していなければなりません。またIR担当者の説明によって株価が上下することもあるため、責任重大ではありますがその分やりがいも大きいでしょう。
さらにIRは投資家からの意見や市場の反応を、自社の経営陣にフィードバックする役割も担っています。経営方針や戦略に間接的にでも影響を与えられるため、やりがいや自信につながるでしょう。
広報がIRに関わる際に注意すること
広報がIRに関わることで「投資家やマスコミなど各所に発信する情報を統一できる」といったメリットがありますが、「情報の開示方法やタイミングなどがバラバラで混乱しやすい」などのデメリットもあります。広報がIRに関わる際の注意点を理解しておきましょう。
正確性と透明性を確保する
IRが発信する企業情報には「正確性」と「透明性」が極めて重要です。なぜなら、そうした情報は投資判断のよりどころとなるため、投資家に対して正確な情報を提供し、適切なタイミングで開示する責任があるからです。
開示する情報は不確かな内容や誤解を招く表現は避け、公平性と透明性を確保することが重要です。たとえば、東京証券取引所の「コーポレートガバナンス・コード」(※1)には、コーポーレートガバナンスの基本原則として適正な情報開示と透明性の確保、正確な情報が明記されています。
広報がIR業務に関わる際には、情報の正確性と透明性の確保が必要不可欠と言えるでしょう。
※1 参考:東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード 基本原則【適切な情報開示と透明性の確保】」
一貫性を維持する
発信する企業情報は、広報活動とIRで一貫していることが重要です。なぜなら、投資家は企業に対し信頼性と一貫性を求めるため、提供される情報が不正確であったりバラバラな内容だと信頼を失う可能性があるからです。たとえば自社の公式サイトから発信された情報とIR活動による情報が異なる場合、投資家は混乱し、その会社に対して不信感を抱くでしょう。
発信する情報は必ず統一し、サイトや電話からの問い合わせにもIR担当者が対応するなど、一貫性を持たせることが重要です。
開示要件を遵守する
各国の金融市場には、情報の開示要件が存在します。IRに関わる広報担当者は企業情報を開示する際、適切な法的要件や開示ルールを遵守する責任があります。
たとえば日本取引所グループの運営サイト(※2)には、適切な情報開示のための制度として以下の2つが挙げられています。
法定開示(金融商品取引法などの法律に基づく開示)
適時開示(証券取引所のルールに基づく開示)
※2 参考:日本取引所グループ「適時開示制度の概要」
IR情報は投資の判断だけでなく株価にも影響するため、上記のような規定に従い、適切な手続きとタイミングで開示するよう注意しましよう。
投資家とコミュニケーションをとる
IR担当者が企業情報を漏れなく・わかりやすく説明するには、コミュニケーションによって投資家たちの関心や懸念を正しく理解することが肝心です。
また、IRは投資家から寄せられる質問や要望への対応も行います。たとえば株価の低迷が続くと、株価を引き上げたい株主から「良いIR情報をたくさん出してくれ」といった要望が寄せられます。IR担当者はこうした要望や意見に対し、適切に対応しなければなりません。
以上の理由により、IRは円滑なコミュニケーションによって企業と投資家を結ぶ「橋渡し」の役割を担っていると言えるでしょう。
競合他社情報を把握する
IRに関わる広報担当者は、競合他社の情報や市場動向を把握することも重要です。競合他社のIR活動や業績発表に関する情報を把握し、自社の立場や業績との比較分析を行うことで効果的なIR戦略を構築できるからです。
たとえば、IRは競合他社が発表した新製品や業績予想などを把握し、自社のIR戦略に反映させます。広報がIRに関わる際には、こうして競合他社の動向にもアンテナを張りIR戦略の構築に活かしましょう。
安全性とセキュリティを確保する
IR活動においては会社の情報や業績における機密性が高く、その情報が漏洩したり改ざんされたりすることは大きなリスクとなります。したがって、広報担当者はIR情報の安全性とセキュリティをしっかり確保するための対策を講じなければなりません。
たとえば、社内でIR情報の取り扱いに関するルールや規定を設けたり、従業員の教育や監査を実施したりすることで安全性を高められるでしょう。広報がIRに関わる際には情報リテラシーを高め、安全性とセキュリティに留意して活動することが重要です。
広報・IRについてよくある質問
広報やIRへの転職を考えるうえで、よく挙げられる質問には以下のようなものがあります。疑問を解決して転職活動に活かしましょう。
- 広報・IRの年収は?
- 広報・IRの残業時間は?
- あると便利なスキル・資格は?
- 未経験でも広報・IRに転職できる?
広報・IRの年収は?
広報やIR担当者の平均年収は484万円ほどです(※3)。国税庁の「令和3年分 民間給与実態統計調査」(※4)によると日本人の平均年収は443万円であるため、平均的な年収と言えるでしょう。
特にIRは実務経験に応じて年収が高くなる傾向があり、上場企業で経験を積んだ人や優秀な人であれば年収1,000万円以上となる場合もあります。豊富な実務経験に加え幅広い知識が求められる職種ですので、スキルアップによる転職や管理職へのキャリアアップにより、さらに多くの年収が見込めるでしょう。
※3 参考:duda「広報/PR/IRとはどんな職種?仕事内容/年収/転職事情を解説」
※4 参考:国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査」
広報・IRの残業時間は?
広報やIRの残業時間は、月間26.3時間ほどです(※5)。
企業にもよりますが、広報やIRは定時出社・定時退社をする人が多く、定期的に残業が発生するようなきつい仕事ではありません。近年ではオンライン化の進展により、イベントやPRの準備・実行などの時間が短縮され、残業時間はさらに減少傾向にあります。
企業説明会などの直前は資料準備などで多忙になることもありますが、基本的にワークライフバランスが取りやすい仕事と言えるでしょう。
※5 参考:duda「広報/PR/IRとはどんな職種?仕事内容/年収/転職事情を解説」
あると便利なスキル・資格は?
広報やIRになるために必須の資格はありませんが、業務に役立つ資格には以下のようなものがあります。中でもIR担当者は「IRプランナー」に加え、「財務報告実務検定」や「日商簿記」の資格を取得しておくと業務遂行や転職に役立つでしょう。
- PRプランナー資格認定制度
広報・PRの基本知識から実務スキルまでを検定する民間資格 - IRプランナー
通称「CIRP(サープ)」。企業分析や情報開示など、IR担当者に求められる専門知識の習得を認定する資格。1年以上実務経験のある人のみが受検できる「CIRP-S」というS級の資格もある - 商品プランナー
商品戦略や販売促進戦略などの基礎的な知識とスキルの習得を認定する資格 - 財務報告実務検定
財務諸表の作成など、財務報告に必要な知識やスキルの習得を認定する資格 - 日商簿記
企業の経営や財務状況を明確にできる、簿記の知識やスキルの習得を認定する資格
未経験でも広報・IRに転職できる?
広報やIRへの転職は未経験でも可能です。実際に、広報やIRの求人の募集要項には「未経験者歓迎」と記載されているものが多くあります。ただし、転職者の多くが実務経験者であるため、未経験からの転職はハードルが高いと言えるでしょう。
未経験から広報やIRへの転職を目指すなら、IRプランナーなどの関連資格の取得や、「情報発信スキル」や「企画・立案の経験」など業務に役立ちそうなスキルをアピールすることで適性を認められやすくなるでしょう。
IRの知識を身につけて広報としてスキルアップしよう
本記事では広報とIRそれぞれの違いについて、仕事内容や業務における注意点、あると便利な資格などを中心に解説しました。
特にIRの仕事では、豊富な実務経験に加え財務や経営などの専門知識も求められます。未経験からの転職は難易度が高いですが、関連資格の取得によって可能性を高められるでしょう。現役の広報担当者は、資格とともにIRに必要な幅広い知識を身に付けることでスキルアップを狙えます。
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2021年にSYNCAのカスタマーサクセスとしてWARCにジョイン。コーポレート領域に特化し、求職者の転職支援から企業の採用支援の双方に従事し、BizDevとしても機能の企画立案などに携わる。