転職すると退職金はどうなる?知っておくべき退職金制度の仕組み
「転職をしたいけど、退職金はどうなるの?」「転職先でも退職金はもらえる?」など、転職を考えている方にとって退職金は気になる内容です。
本記事では、転職した場合の退職金や退職金制度、退職金の相場まで解説します。記事を読むことで退職金について理解し、転職する際の退職金への不安を拭うことができます。また退職金の賢い運用方法についても解説しますので、上手に運用し退職金を増やしましょう。
- 退職金とは?
- 退職金の種類
- ①退職一時金制度
- ②退職金共済制度
- ③企業年金制度
- 確定拠出年金制度(DC)
- 確定給付企業年金制度(DB)
- ④前払い制度
- 自己都合退職の場合
- 会社都合退職の場合
- ①定額制
- ②基本給連動型
- ③別テーブル制
- ④ポイント制
- 退職所得控除額の計算方法
- 勤続10年の場合
- 1.定期預金
- 2.個人向け国債
- 3.個人年金保険
- 4.投資信託
- 転職したい会社に退職金制度があるか確認する
- 退職金がもらえない場合がある
- 転職すると今までの退職金の積み立てはなくなる
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退職金とは?
退職金とは、退職の際に会社から支払われる金銭のことであり、通常の給与や賞与とは別に支払われます。退職金を支払う制度を退職金制度といい、この制度を利用するかしないかは会社の自由であるため、退職金制度がない会社では退職金が支払われません。反対に退職金制度が採用されていれば、会社は必ず支払わなければならないということです。
退職金で支払われる金額は会社によって異なりますが、基本的には勤続年数や基本給と役職等に応じて計算されます。支給される条件も会社によって異なり、自己都合での退職や解雇された場合でも支給されることがあります。
退職金の種類
退職金制度は多くの種類があり、会社が独自に支給を行うことや退職金共済、確定拠出年金などの制度を活用して退職金となる場合もあります。ここからは、以下の4つの退職金制度を紹介していきます。
- 退職一時金制度
- 退職金共済制度
- 企業年金制度
- 前払い制度
①退職一時金制度
退職一時金制度とは、従業員が退職する際に、会社が積み立てたお金を全額支給する制度です。多くの方が想像する退職金のイメージにあてはまるのは、この制度であることが多いです。
支給される額や支給時期は会社ごとで異なっているため、自身が勤めている会社の規定を確認しておきましょう。
②退職金共済制度
退職金共済制度とは、中小企業で退職金を準備するのが難しい場合に利用される退職金制度です。自身の会社で退職金を扱わず、勤労者退職金共済機構などの外部の機関で積み立てる方式です。
会社が金融機関へ掛金を毎月納付することで、従業員の退職の際に勤労者退職金共済機構が退職金を払うという仕組みになります。そのため会社が倒産などの理由で退職金を支払えない場合においても、従業員は退職金の受け取りが可能です。
③企業年金制度
会社によっては、企業年金として退職金が支払われる場合があります。受け取り方法としては年金・一時金・併用の3種類から選ぶことが可能です。
企業年金制度には、確定拠出年金制度(DC)と確定給付企業年金制度(DB)の2種類があります。
確定拠出年金制度(DC)
まず、確定拠出年金制度(DC)と呼ばれる企業年金についてです。確定拠出年金制度とは、会社が掛金を支払い、従業員が運用する制度です。退職後に受け取れる額は本人の運用次第です。
また運用した結果として、掛金を下回っていたとしても会社側に補う責任はありません。
確定拠出年金の受け取りは60歳以降と定められているため、転職などの理由で退職する際には移行手続きを行う必要があります。転職した先に確定拠出年金制度がない場合、個人型確定拠出年金であるiDeCoへ移行しなければなりません。
確定給付企業年金制度(DB)
続いて確定給付企業年金制度(DB)についてです。会社側に運用や管理、給付までの責任がかかる年金制度であるため、運用による損失は会社が補わなければなりません。
会社が年金を積み立てて管理から運用まで行う「基金型」と会社が信託銀行や生命保険会社などと契約し運用する「規約型」があります。どちらの方法であっても給付内容は会社で決められているため、それに基づき給付されます。
④前払い制度
退職金を前払いで受け取ることができる、前払い制度があります。従業員の在職中に、退職金を給与や賞与などに上乗せして支払われます。
退職金を在職中に受け取り、モチベーションの向上につなげるために前払い制度が用意されました。近年では定年まで勤めあげる方が減少し、転職などが増加しているため、前払い制度は現代の働き方に合わせた支給方法です。
しかし毎月の給与額が増えるのに比例して、所得税や住民税などの税負担の増加があることがデメリットとなります。
転職したら退職金は減るの?
転職をした場合には、退職金が減ることが多いです。退職金は転職する人には厳しい制度であり、一般的には勤続年数によって退職金の額が決められます。
たとえば勤続年数が3年未満であれば、退職金が支給されない場合がほとんどです。昔の日本は終身雇用が主流であったため、以前であれば時代にマッチした制度でした。
しかし労働条件が悪いなどの理由で転職する場合には、早めの転職をすれば生涯賃金が増加することも少なくないです。
退職金の相場
法律などで定めるものではなく、退職金に関しては会社が定めるものですが相場はいくらくらいなのでしょうか。
自己都合による退職、会社都合による退職にわけて解説していきます。
また学歴ごとにもわけていますので、参考にしてみてください。
自己都合退職の場合
「令和元年賃金事情等総合調査(中央労働委員会)」によると、自己都合による退職金の相場は以下の表のようになります。
勤続年数 | 大卒 | 短大・高専卒 | 高卒 |
---|---|---|---|
3 | 32万2千円 | 20万2千円 | 18万6千円 |
5 | 50万9千円 | 34万4千円 | 40万4千円 |
10 | 137万5千円 | 105万6千円 | 106万7千円 |
15 | 286万9千円 | 261万2千円 | 252万4千円 |
20 | 525万5千円 | 514万6千円 | 483万4千円 |
25 | 812万2千円 | 794万3千円 | 839万1千円 |
30 | 1,123万6千円 | 1,115万2千円 | 1,214万4千円 |
35 | 1,420万7千円 | 1,376万9千円 | 1,611万3千円 |
40(大卒は38年、高卒は42年) | 1,550万2千円 | 1,503万6千円 | 1,879万7千円 |
(※1)参考:退職手当制度がある企業の割合
表を見ると、勤続年数に比例して退職金が増加していくことがわかります。退職金として1,000万円以上を支給してもらうには、30年以上勤める必要がありそうです。
会社都合退職の場合
「令和元年賃金事情等総合調査(中央労働委員会)」による会社都合退職のデータを表にまとめたものです。自己都合での退職金の場合と比較してみると、会社都合による退職金の方が多いです。
勤続年数 | 大卒 | 短大・高専卒 | 高卒 |
---|---|---|---|
3年 | 57万9千円 | 48万2千円 | 52万2千円 |
5年 | 96万8千円 | 71万2千円 | 98万4千円 |
10年 | 245万9千円 | 180万8千円 | 231万3千円 |
15年 | 426万円 | 359万6千円 | 431万3千円 |
20年 | 746万2千円 | 644万円 | 671万6千円 |
25年 | 1,016万7千円 | 929万9千円 | 1,051万5千円 |
30年 | 1,218万6千円 | 1,261万3千円 | 1,401万8千円 |
35年 | 1,473万4千円 | 1,426万3千円 | 1,783万5千円 |
40年(大卒は38年、高卒は42年) | 1,608万5千円 | 1,544万2千円 | 1,917万4千円 |
定年 | 1,788万3千円 | 1,413万9千円 | 2,114万円 |
(※2)参考:退職手当制度がある企業の割合
40年勤めあげることで、学歴を問わず1,500万円を超えています。やはり退職金制度は、途中退職する方には厳しい内容となっていることがわかります。
自己都合退職の場合には30年以上が必要でしたが、会社都合による退職金は25年勤めあげることで、1,000万円の退職金を受け取れるようです。
転職時の退職金の算出法
退職金の額は勤続年数や役職、退職理由などの要素を考慮して算出されます。転職する際に支給される、退職金の算出方法について以下の4つを解説します。
- 定額制
- 基本給連動型
- 別テーブル制
- ポイント制
①定額制
定額制とは、勤続年数に応じて退職金の額があらかじめ決まっているものです。たとえば15年勤続した場合は300万円、30年勤続した場合は1,000万円のように金額が定められています。
就業規則や退職金の規定に記載されているため、確認しておきましょう。
②基本給連動型
基本給連動型は勤続年数だけではなく、退職理由や退職時の基本給を考慮して退職金を決める方法です。
一般的に支給係数は3年の勤続で1.0、4年の勤続で2.0など勤続年数に比例する場合が多いです。また退職理由は自己都合なら0.8、会社都合であれば1.0とされていることがほとんどです。
具体的な計算例(10年目の支給係数を10と仮定)
- 勤続3年で自己都合退職 25万円(基本給)×1.0(支給係数)×0.8(自己都合退職)=20万円
- 勤続10年で会社都合退職 35万円(基本給)×10(支給係数)×1.0(会社都合退職)=350万円
③別テーブル制
別テーブル制では、勤続年数に応じて基準額を定め、等級や役職に加えて退職理由を組み合わせた表(テーブル)を利用して計算する方法です。基本給連動型で考慮される内容に、等級や退職理由が加わっています。
具体的な計算例(勤続7年目の基準額を60万円、勤続20年は300万円、一般社員0.8、課長1.2と仮定)
- 勤続7年、一般社員、会社都合退職 60万円(基準額)×0.7(役職)×1.0(会社都合退職)=42万円
- 勤続20年、課長、自己都合退職 300万円(基準額)×1.2(役職)×0.8(自己都合退職)=288万円
④ポイント制
ポイント制とは、成果報酬型の退職金の算出方法です。他の算出方法にも含まれる勤続年数や役職などに加えて、会社への貢献度や成長度などにポイントを設定します。このポイントに応じて退職金の算出を行います。退職時に今まで加算されたポイントに、1ポイントあたりの単価をかけて計算します。
勤続年数だけではなく実績も評価されるため、実績があれば早期退職した場合でもある程度の退職金が支給されるメリットがあります。
具体的な計算例(1ポイント1万円と仮定)
- 今までに付与されたポイント280ポイント 280(ポイント)×1万円(1ポイントあたりの単価)=280万円
転職時の退職金にかかる税金
分割で払われる企業年金などもありますが、退職金は会社を辞める際に一括で支払われる場合が多く大きな額となります。受け取る額が大きいと、支給される退職金にかかる税金もかなり大きな額になることが多いです。
そのため退職金を受け取る際には、節税が大切になります。そこで節税の方法として、退職所得の受給を申告すれば退職所得控除を受けることが可能です。
退職所得控除額の計算方法や、具体的な計算例を以下で紹介していきます。
退職所得控除額の計算方法
退職所得控除額を求めるためには、国税庁の「退職所得の計算方法」を参考にすると良いでしょう。
勤続年数さえわかれば、以下の計算式を利用することで簡単に求めることができます。
- 勤続年数が20年までの場合 40万円×勤続年数(80万円より少ないときは80万円)
- 勤続年数が20年を超える場合 70万円×勤続年数-600万円 障害者となったことにより退職した場合は、上記で計算した金額に100万円を加算します。 (※3)
(※3)参考:退職所得の計算方法|国税庁
勤続10年の場合
勤続10年の場合の退職所得控除額についての計算例を示します。
勤続10年であり、勤続年数が20年までの場合にあてはまるため、以下の計算式を使用します。
- 40万円×勤続年数(80万円より少ないときは80万円) 40万円×10年(勤続年数)=400万円
となり、退職所得控除額は400万円です。
もし障害者になったことが理由で退職する場合は、算出した400万円に100万円を加えて、500万円の退職所得控除を受けることが可能です。
退職金が減るリスクに備えるには
近年では退職金の額が減少してきており、平均寿命が伸びているため老後資金の心配があります。そのため退職金を上手に運用し、老後資金を蓄えておくことが必要です。
退職金のおすすめの運用方法として、以下の4つを紹介していきます。
- 定期預金
- 個人向け国債
- 個人年金保険
- 投資信託
1.定期預金
定期預金は普通預金とは違い、期間を定めて銀行にお金を預けます。
定期預金の期間は1週間~10年ほどに設定されており、自身に合った期間を選ぶことが可能です。5年後に家を買うなどであれば、5年間定期預金に預けておくことで普通預金より多くの金利を得るなどの使い方が考えられます。
銀行は身近であり、1,000万円までであれば元本が保証されているため安心して預けられるメリットがあります。
定期預金は、一定期間引き出せないことや金利の低さがデメリットです。途中で定期預金を解約するとなると、利息が貰えない場合もあります。また普通預金より金利が高いとはいえど、投資信託などと比較すると低金利です。
これらのことから定期預金には日常生活での予備としてや、近年使う予定のあるお金を預ける程度にしておくことがおすすめです。
2.個人向け国債
個人向け国債は、個人の方でも買えるようにされた国の債権のことです。国債とは簡単に言えば、国の借金です。つまり国にお金を貸すことで、その分の利子が利益として返ってくるという仕組みになっています。
個人向け国債は郵便局や証券会社などで個人が購入できるものであり、1万円からの購入が可能となっています。年率0.05%の最低金利が保証されており、元本割れのリスクもなく国が発行していることによる安心感もメリットです。
期間は3年、5年、10年と用意されており、10年の場合には半年ごとに適用利率が変更されるため受け取れる金利が増加する可能性もあります(※4)。
デメリットとしては、金利がそれほど高くないため利回りがよくないことが挙げられます。
(※4)参考:個人向け国債窓口トップページ : 財務省
3.個人年金保険
個人年金保険は、国民年金保険と違い加入の義務がない保険です。保険料を毎月または毎年支払う方法と、全額を一回で支払う方法があります。一括で支払う方が保険料が安く済むため、退職金を受け取った場合には一括での支払いがおすすめです。
また個人年金保険を利用するメリットとして、個人年金保険料控除が受けられることが挙げられます。一定の条件を満たしている場合には、最高で年間4万円の控除を受けることが可能です(※5、6)。控除額の分だけ課税所得金額を減らせるため、所得税や住民税を抑えられます。
(※5)参考:No.1140 生命保険料控除|国税庁
(※6)参考:No.1141 生命保険料控除の対象となる保険契約等|国税庁
4.投資信託
投資信託とは、顧客から集めた資金を投資のプロが運用代行し、さまざまな債権や株式などに分散投資できるものです。投資のプロが国内国外問わず投資先を選び運用し、そこで得た損益を投資額に応じて顧客に分配します。株式投資では1つの投資対象に投資しますが、投資信託では預けたお金が分散投資に利用されるためリスクの低減が可能です。
投資信託は少額からの投資が可能であり、100円ほどの資金から始められるというメリットがあります。また、つみたてNISAなどを利用することで、非課税での運用が可能となります。
しかし元本は保証されておらず、元本割れのリスクや運用を代行してもらうため手数料などがかかる点がデメリットです。
退職金について転職時に注意すべきこと
退職金は、退職する際に必ずもらえるとは限りません。退職金制度が導入されていなかったり、退職金受け取りの条件を満たせていないことが理由で受け取れないことがあります。
退職金について転職時に注意すべき点を紹介していきます。
転職したい会社に退職金制度があるか確認する
転職しようと考えている方は、転職前に転職先の会社に退職金制度があるかを確認しておくことが必要です。
退職金制度の導入の有無は会社に定める権利があるため、退職金制度の導入は必須ではありません。そのため中には退職金制度を用意していない会社も存在します。厚生労働省の調査によると、退職給付(一時金・年金)制度がある企業の割合は75.5%となっており、25.5%の企業には導入されていないことがわかります(※7)。
(※7)参考:結果の概要(4 退職給付(一時金・年金)制度)|平成25年就労条件総合調査結果の概況|厚生労働省
退職金を受け取りたいと考えているのであれば、会社の規定などを確認するか、事前に転職先の会社の方に質問しておくと良いでしょう。
退職金がもらえない場合がある
退職金制度がある場合でも、退職金がもらえないこともあります。
退職金を支給する条件が定められている会社もあり、条件を満たしていない場合には会社側に支払う義務はありません。
しかし同僚と同じ条件なのに自分だけ退職金がもらえないなど、いじめや嫌がらせで退職金がもらえない場合は別です。そのような場合には厚生労働省の「労働紛争解決制度」を利用し、会社側との話し合いが可能です(※8)。
(※8)参考:個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん) |厚生労働省
転職すると今までの退職金の積み立てはなくなる
転職前の会社で積み立てられていた退職金は、転職することでリセットされてしまいます。長年勤めていた場合でも、勤続年数に関係なく退職金の積み立てはなくなる場合がほとんどです。
しかし転職前の会社が企業年金制度であり、転職後の会社でも企業年金制度が採用されている場合には退職金積み立ての継続ができます。確定拠出年金制度(DC)や確定給付企業年金制度(DB)などでは、引継ぎができるケースも多いです。
転職は退職金も含めて検討しよう
3年未満で転職する際には、退職金が支給されないことも多いです。退職金制度の有無は会社によって異なり、支給条件が設定されている場合もあるため会社の規定などの支給条件を確認しておくことが必要です。
また、退職金にかかる税金は非常に大きくなるため、退職所得控除などを活用し節税することをおすすめします。転職先の会社にも退職金制度があるのか、引継ぎが可能な退職金制度かなどを確認してから転職をしましょう。
2021年にSYNCAのカスタマーサクセスとしてWARCにジョイン。コーポレート領域に特化し、求職者の転職支援から企業の採用支援の双方に従事し、BizDevとしても機能の企画立案などに携わる。