経理・労務・総務の違いを徹底解説|それぞれ向いている人の特徴まで解説
「経理・労務・総務の違いがよくわからない」「管理部門を目指したいけれど、どの職種が向いているか知りたい」。
新卒での就職活動や、転職活動で、経理・労務・総務の仕事を目指している人も多いでしょう。この記事では、バックオフィスの主要な職種である経理・労務・総務の3つの職種の具体的な業務内容や向いている人、役立つ資格を紹介します。
- 経理・労務・総務の違いとは
- 経理の主な仕事内容
- 労務の主な仕事内容
- 総務の主な仕事内容
- 経理に役立つ資格4選
- 日商簿記検定
- ビジネス会計検定試験
- 税理士
- 中小企業診断士
- 社会保険労務士
- キャリアコンサルタント
- 安全管理者
- 衛生管理者
- 経理の仕事に向いている人の主な特徴
- 労務の仕事に向いている人の主な特徴
- 総務の仕事が向いている人の主な特徴
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経理・労務・総務の違いとは
経理・労務・総務への就職は、労働時間を計算しやすかったり、仕事とプライベートが分けやすかったりという側面もあることから人気の職種です。一方で、経理、労務、総務などがどういう仕事内容なのか、わかりづらいという人もいることでしょう。
まずは、経理、労務、総務の仕事内容について説明していきます。
経理の主な仕事内容
経理は、「経営管理」の略で、会社の資金の流れを管理する職種です。日々のお金の出入りを、仕訳帳や帳簿に記録し、月次・年次で試算や決算という会計業務を行うのが一般的です。経理と会計を別部署にしている企業もあります。
日々の記帳作業を担当する人から、経営者に求められる管理会計の高度な分析を行う人まで、経験や所持している資格によって、担当する業務は多様です。
また、会社の試算運用を担当する財務という職種もありますが、中小企業などでは、経理担当が、経理・会計・財務のすべてを担うこともあります。企業によっては、給与計算や社会保険関連の手続きなど労務に属する業務を担当することもあります。
労務の主な仕事内容
労務の仕事内容は、会社の従業員が安定して働ける環境を整備することです。具体的には、勤怠管理、給与計算、各種社会保険手続きなど従業員の労務管理に関わるものから、従業員と会社の間の調整や仲裁なども担当しています。
勤怠管理と給与計算は、従業員の打刻をもとに集計し給与計算に反映。欠勤や早退・遅刻の状況を把握するため、全従業員のデータ管理を行います。最近は打刻もデジタル処理により、業務量は軽減されています。従業員が会社で働く上で、労働三法をはじめとする各種の法令に従うことが必要です。そのため労務担当者は、法令に詳しくなければなりません。
また、従業員が安心して働ける環境を整備する上で、労働時間や各種休暇などを設計・運用するのも労務です。従業員の離職を防止し、高いモチベーションとエンゲージメントを持って仕事に臨んでもらえるようにする重要なポジションです。
総務の主な仕事内容
総務は会社運営に関する広い範囲の業務をカバーする仕事で、経理や労務のように明確な役割と仕事内容が決まっていない会社もあります。中小企業などでは会社の環境整備に関するほとんどの業務をこなすことも多いです。
具体的な総務の業務は、電話対応や来客対応などを含む庶務業務から福利厚生や社内催事の企画・運営、株主総会・入社式など外部に向けた企業イベントの企画・運営、経営者のサポートなどがあります。衛生・防災対策、社の慶事・弔事の執行などを行うのも総務です。
総務部署内のポジションによって担当する業務はさまざまですが、株総会を執り仕切るポジションなどは、経営企画や経営陣に近いところにいるといえます。管理部門の中でも、企業全体を俯瞰し必要な環境を整える総務。会社を支える職種としてやりがいのあるものです。
経理・総務・労務は兼任も可能か?
中小企業やスタートアップなどでは、経理・労務・総務を兼任することもあります。管理部民として、職務の性格が似ていることもありますが、それぞれが扱う従業員や会社のデータが重複しているのも理由のひとつです。
経理・総務・労務の業務は、連携するフローで行われますので、全体を把握した担当者がいることがメリットになる場合もあります。一方、担当者に業務が集中する、マルチタスクになり人為的なミスが起こりうる、などデメリットもあります。
兼任による業務量への対策としては、ペーパーレス化、RPA(Robotic Process Automation/ルーティンな業務を自動化するシステム)、BI(Business intelligence/組織の意思決定をデータにより執り行うシステム)などの導入などで、会社全体のDX化を推進し、入力や書類作成などの業務負担を減らすことが効果的です。
経理・総務・労務で役立つ資格
経理・総務・労務は、それぞれの実務に就くためになんらかの資格が必要なものではありません。しかし、専門的な知識や経験が必要な業務もありますので、それに関する資格を取得する勉強をするのは無駄になりません。
経理・総務・労務に役立つ資格にはどのようなものがあるでしょうか。
経理に役立つ資格4選
経理は、日々の帳簿や仕訳の記帳ができること、月次・年次の決算ができることが求められます。法令への理解が必要になりますので、資格取得を目指して勉強することで、日々の実務にも役立ちます。
日商簿記検定
日商簿記検定は、日本商工会議所が行っている簿記の検定で、多くの経理担当者が持っているものです。1級から3級まであり、3級は初歩的なもの、2級では高度な商業簿記と原価計算を含む工業簿記までを範囲とし、財務諸表の読み方などが学べます。経理への転職では2級を取得していると有利です。
1級は、経営管理や経営分析を行うことができる極めて高度なレベルの会計知識を含む資格で、税理士、公認会計士など高度な資格への登竜門とされています。
ビジネス会計検定試験
ビジネス会計検定試験は、大阪商工会議所が行っているもので、ビジネスパーソンに必要な会計知識を学べるものです。
1級から3級までのレベルがあり、3級は財務三表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)の読み方の基礎と分析、2級は企業の経営戦略・事業戦略を理解するための分析力をつけ、1級は経営意思決定に役立つ財務諸表の分析、管理会計、企業価値分析までの高度な会計分析力をつけることができます。
税理士
税理士試験は難易度の高い国家資格。法人や個人事業主の確定申告、税申告を独占業務として持ち、独立起業も可能な資格です。試験の難易度が高いだけでなく、受験資格が定められていて、学歴、資格・試験に関する受験資格、職歴に関する受験資格などが設けられています。
試験科目は、11科目の中から5つを選択しなければなりません。「簿記論」「財務諸表論」が必須、「所得税法」「法人税法」は選択必須科目で最低でもどちらかを選択しなければなりません。各種税法についての知識が問われる試験です。
税理士は、経理経験の長い人や積極的に資格を所得する人が取得を目指す資格で、取得すると部署の中心となり活躍できます。
中小企業診断士
中小企業診断士は、中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行うことができる国家資格。資格取得には、経済学や財務会計、経営法務など基本的な知識が問われる1次試験(選択式)、組織、マーケティング、経営戦略について問われる2次試験(筆記・口述)に合格したあと、実務補習・実務従事が必要です。
多くのビジネスパーソンが取得したいと思う資格として人気ですが、取得難易度は高いです。
中小企業へのコンサルティングには、財務・会計の知識と経験が必要です。そのため、経理で培った知識を活かすことができます。また、中小企業診断士の資格取得のために、経営やマーケティングを学ぶことは、管理会計により経営を支える上でとても有効です。
労務に役立つ資格2選
労務は、全社の従業員の労働に関連する部分を管理する仕事です。社員に関する業務ですので、人事部署の業務に含まれることもあります。労務担当者が専門的に取得しなければならないのは、労働三法をはじめとする労働管理の法令です。従って、労働や社会保険に関する資格の取得は、労務の業務に役立ちます。
社会保険労務士
社会保険労務士は、社会保険の申請書の作成や提出手続きの代行、労働関連の帳簿書類の作成などの業務を独占業務として持つ国家資格です。公認会計士や税理士に比べると短期間で合格を狙うことができますが、難易度は高くなっています。
社会保険労務士の試験には、学歴要件や資格などの受験資格が定められ、労働基準法など労働関連法令から出題されます。選択式試験と択一式試験の2種類のマークシート試験をクリアしなければなりません。
社会保険労務士の資格を持つことで、企業の労務業務に関わる法律知識が十分につくので、法令に基づいた業務の管理や、福利厚生、休暇などの施策が可能になります。中小企業の人事などでは社会保険労務士に労務関連の業務を外注することもあり、独立開業することも視野に入る資格です。
キャリアコンサルタント
キャリアコンサルタントは、学生や求職者に、キャリア形成のアドバイスを行うことができる国家資格です。合計140時間の講習を受け、国家試験に合格するとキャリアコンサルタントとして登録できます。
試験は、論述と面接です。面接では、キャリアコンサルティングの15分のロールプレイなどが試されます。
企業でも、社員が抱えるキャリア形成の課題に対処したり、退職後のセカンドキャリアの相談を受けたりキャリアコンサルタント資格を持つ人材は活躍できます。また、自身が退職した後には、資格を活かし職業紹介機関や教育訓練機関などで働くことも可能です。
総務に役立つ資格2選
総務は会社全体の運営を担う仕事です。会社には、従業員が安全に仕事ができる環境が必要ですので、総務担当者には、そのための知見が求められます。安全管理、健康管理に役立つ資格は総務には役立つでしょう。
安全管理者
安全管理者は、もともと林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(物の加工業を含む)電気業、ガス業などの現場に配置が定められている管理者です。
従業員が働く、建物や設備、業務の方法に危険がある場合の応急措置や危険防止、安全装置などの点検、安全のための教育と訓練、災害時の原因の調査、消防や避難の訓練などを担当します。
配置が定められていない業種の企業の場合でも、避難訓練や器具の点検などの業務は総務の担当ですので、安全管理者は役立ちます。厚生労働大臣が定める研修を受ければ取得できる資格で、研修は2日間程度になります。
研修では、関係法令、安全教育、安全管理、リスクアセスメント、労働安全衛生マネジメントシステムについて学びます。
衛生管理者
衛生管理者は、労働安全衛生法により定められた国家資格です。常時50人以上の職場には、「衛生管理業務従事者」を置くことが定められていますが、専任されるために必要な資格の一つです。
第一種衛生管理責任者と第二種衛生管理責任者の種別があり、第一種は、「有害業務」を含む全業種に対応できます。試験は、受験資格が定められていますが比較的取りやすいものです。
50人以上の会社には配置が義務付けられますので、総務職の方は取得しておくと役立ちます。
経理・総務・労務に向いている人の特徴
同じ管理部門でも、経理・総務・労務では、それぞれ向いている人の特徴が異なります。共通しているのは、「縁の下の力持ち」として会社全体を俯瞰し支えることにやりがいを感じられることです。それでは、経理・総務・労務に向いている人の特徴をみてみましょう。
経理の仕事に向いている人の主な特徴
経理に向いている人は数字に強く、集中力と注意力があり、論理的思考に長けた人です。経理は会社の毎日のお金の流れを、管理する仕事。日々の仕訳や記帳では単純な入力作業をミスなく行うことが求められます。
また、決算業務では、財務会計業務として、財務三表の作成と分析を行う必要がありますし、経営の意思決定のために管理会計を行うのも重要な業務です。そのため、分析することや論理的・客観的に考えることが好きな人でないと務まりません。
外部の税理士や税務署、社会保険労務士との折衝も必要になるため、根気強く調整するコミュニケーション能力と折衝力も求められます。
労務の仕事に向いている人の主な特徴
労務に求められるのは、正確に集中してデータを扱うことができること、従業員全体のことを考えられること、そして、法令の意味、解釈、運用に興味があり理解する能力が高いことです。
特に、労務は、労働関連の法令に対する知識を蓄積する必要があります。法律の扱いに不得意な人は難しいでしょう。また、すべての従業員に対し、公平に誠意を持って対応することが求められますので、個人的な感情や主張を仕事に持ち込まないタイプの人が適しています。
労務を取り巻く情勢は、社会のトレンドとともに変化していきます。働き方や雇用形態、勤務形態など労務の基本も、法令により変化していきますので、社会の動きに敏感で、常に自分の知識や知見をアップデートできる人が向いています。
総務の仕事が向いている人の主な特徴
総務は、庶務と呼ばれる会社全体の世話係のような仕事から、催事、株主総会などの大きなイベントの執行・運営まで、会社のさまざまな事を背負っている部署です。人のため、会社のために力を尽くすことにやりがいを感じるタイプの人が向いています。
反対に、営業のように個人の成績によりダイレクトに評価されることに喜びを感じるタイプの人は向かないでしょう。また、会社の安全性、災害時の対応、施設の点検や補修など細かいところに神経を使う業務もありますので、普段から「気の利いた」動きができる人が優秀な総務に成長すると言われています。
経理・総務・労務の仕事の違いを理解して、自分の得意な分野に転職
管理部門の代表的な職種である経理・総務・労務ですが、業務の内容はそれぞれ違います。専門領域が違いますので、目指す職種に合った準備が必要です。就職・転職を目指すには、自分が、どの職種に向いているかをきちんと判断し、適した職種を目指す事が重要です。
管理部門専門の求人情報サービス・SYNCAには、経理・総務・労務の求人が多数あります。求められる人材像や条件を参照すると、経理・総務・労務の仕事の内容も見えてきますので、転職活動に役立つことでしょう。SYNCAを上手に活用しながら、管理部門への転職を成功させてください。
2021年にSYNCAのカスタマーサクセスとしてWARCにジョイン。コーポレート領域に特化し、求職者の転職支援から企業の採用支援の双方に従事し、BizDevとしても機能の企画立案などに携わる。