ノウハウ

未経験からの人事への転職は難しい?成功のポイント・有利な資格まで解説

栗田 謙人
更新日:2023/08/28

管理部門への転職を目指す方にとって、人気な部署が人事部です。人事を目指す方の中には、未経験からの転職が可能なのかどうか気になる方も多いでしょう。この記事では、そのような人事志望者の方に向け、人事への転職を成功させるための課題を整理し、転職のためのポイントや資格について説明します。

目次
  • 未経験から人事への転職は難しい場合が多い
  • 未経験からの人事への転職が難しい理由
    • 人事業務は幅広いスキルが必要なため
    • 求人数に対して応募者数が多く競争が激しいため
    • 企業の戦略やビジョンに密接に関わっているため
  • 人事の具体的な業務内容
    • 採用業務
    • 教育研修
    • 労務
    • 人事評価や人員配置の計画
  • 会社が人事に求めるスキルや能力とは?
    • 冷静かつ的確な判断や分析ができる
    • 秘密を厳守できる
    • 観察眼が優れている
  • 未経者から人事への転職を成功させるためのポイント
    • 会社目線で納得感のある明確な志望動機を作成
    • コミュニケーション力の高さをアピールできるような根拠を提示
    • 人事の仕事と親和性のある過去の経験やスキルをアピール
    • 人事で活用できる資格を取得する
    • 採用担当枠を狙う
  • 人事への転職で有利になる資格
    • 社会保険労務士
    • キャリアコンサルタント
    • 人事総務検定
  • ポイントを押さえ、未経験から人事への転職を成功させよう
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未経験から人事への転職は難しい場合が多い

未経験から人事への転職未経験が難しい理由は、人事の仕事が多岐にわたり、各領域で特殊な知識と技術が求められるからです。

とはいえ、未経験者であっても、必要なスキルや知識を身につけることによって、転職に成功することは十分に可能です。具体的には、人事向けの研修や講座を受けたり、専門的な書籍で学びを深めたり、人事業務に役立つ資格を獲得することで、転職を有利に進められます。

さらに、過去の職業経験から人事で活かせるスキルやノウハウを持っている人は、人事への転職にプラスに作用します。

未経験の状態から人事への転職を考える人は、求められる資質をしっかりと把握し、自身の特性を分析しながら戦略を練り、それに基づく対策を計画する必要があります。

未経験からの人事への転職が難しい理由

人事への転職は、未経験からだと難易度が高いです。その理由は、人事が人気の管理職であること、そして専門職であることに加え、人事の求人が少ないということによります。限られた求人に対して、経験者が多く応募してくるため、未経験者はその中で自身を差別化し、選ばれることが求められます。

人事業務は幅広いスキルが必要なため

人事は多種多様な業務を包括する領域であり、それに伴って広範な知識、スキル、そして実際の職場経験が必要とされています。人事部門は、組織の核心的な要素である「人」「物」「金」のうち、「人」に関する責任を担当します。この範囲は、新人の採用から育成、組織構築など、人的要素に関わる多岐にわたる業務を含みます。

「人」に携わる職種のため、洞察力や相手から本質的な答えを引き出す問いのスキル、説明力、判断力など、高度なコミュニケーション能力が要求されます。経験者との競争の中で、未経験から成功するためには、際立ったスキルが必要となります。

求人数に対して応募者数が多く競争が激しいため

人事の求人は、限られた空きポストに対して大量の応募が集まる傾向があります。また、求人が出る理由は、欠員補填や組織拡大のためであり、大規模な募集が行われるわけではありません。さらに、人事部門は企業文化と深く結びついているため、社内から人材を移動させて補うことも珍しくありません。

未経験からの応募者は、経験者と同じポジションを争うことになります。しかし、¥人事経験者以外の候補者の経験、スキル、実績に価値を見出し、採用する場合もあります。したがって、戦略的な転職活動を行えば成功の可能性は高まるといえるでしょう。

企業の戦略やビジョンに密接に関わっているため

人事は管理部門の中でも、企業の戦略やビジョンに深く結びついた部署として機能します。社員は会社のビジョンを理解し、それに賛同する集団です。どれだけ能力がある人材でも、採用の際にはその人が会社の全体的な価値観と一致するかどうかが重要な判断基準となります。

人事への転職の際には、企業の持つビジョンや戦略に対する詳細な理解が必要です。それは、長年その企業で働いてきた社員と同等でなくても構いません。その会社で自分の経験、知識、スキルをどのように活用できるかを提案することが求められます。したがって、転職活動を成功させるためには、その会社のことを考え抜いた対策が必要となります。

人事の具体的な業務内容

人事職を志す未経験者の中には、具体的な業務内容を把握したい方もいらることでしょう。採用や教育といった業務は他の職種でも経験できますが、労務管理やパフォーマンス評価などは、経験がなければ理解するのが困難かもしれません。ここでは、人事業務について具体的に説明します。

採用業務

採用業務は、会社の経営計画や各部門のニーズを考慮しながら進行する、人事の重要な役割です。採用計画の策定、求人募集、選考過程、そして採用者の入社手続きが含まれます。

採用には、応募書類の詳細なチェックや面接など各部門と協調しながら実施する業務も含まれます。「人」は企業の貴重な資源であり、利益を増やし企業の成長を支える存在です。採用の際には、候補者の経験やスキルの評価も大切ですが、会社のビジョンに対する理解と共感が求められます。

教育研修

人事は社員の教育・成長も担当します。新入社員には、社会人基礎研修やマナー研修の他、会社の理念やビジョンを理解する研修も行います。また、新入社員だけでなく全社員向けのスキル向上セミナーやリーダーシップトレーニング、管理職研修の企画と実施も人事の重要な業務です。

人材の育成は、生産性を向上させるため、または、ビジネスに必要なスキルや知識を習得させるために重要です。社会環境や技術の進化に伴い、教育の方法論も進歩しています。人事担当者は、新しい教育方法を常に学び、人材開発の知識を更新する必要があります。

労務

労務管理は、従業員の出勤・退勤の管理、給与の計算、社会保険の手続き、年末調整、福利厚生の提供、人事規定の管理、労働安全衛生管理等の業務を行います。これら全ては、従業員が安心して働ける環境を提供するための支援を担っています。企業によっては、給与計算や社会保険手続き、年末調整などは経理部門が行う場合もあります。

労務管理は、従業員のモチベーション向上と企業信頼の構築に重要な役割を果たし、その責任は人事担当者に大いにかかっています。

人事評価や人員配置の計画

人事評価は、教育や能力開発を目的とした、従業員の評価活動です。人事部門は、従業員のスキル取得、目標達成状況、企業への貢献度を客観的に評価し、それを基に給与、ボーナス、昇進、配属などを決定します。従業員の評価は、モチベーション向上や離職率の低下に直結し、人事業務の重要な一部を成します。

また、従業員のスキルや経験を評価し、その結果から人材配置を行うのも人事の役割の一つです。人材配置では、各従業員の特性や能力を最大限に活用できる、そしてその人自身が更なる成長を遂げられるような役職や部署を選定することが求められます。これは、従業員が自己実現を図ると同時に、企業全体としても最高のパフォーマンスを発揮できるようにするための重要な役割です。

会社が人事に求めるスキルや能力とは?

人事への転職は未経験からでも挑戦可能ですが、しっかりとした準備が求められます。特に重要なのは、人事が必要とするスキルや能力を身につけることです。これまでの経験で既にそれらのスキルを獲得している場合は、それを効果的にアピールすることで転職にプラスとなるでしょう。

冷静かつ的確な判断や分析ができる

人事は、従業員の評価や配置など、企業の経営戦略やビジョンを具現化するための業務を多く担当します。従業員という「人」に携わるため、分析や判断には冷静さが必要です。企業の指針に基づいて、ときには厳しい決断を下さなければならないこともあります。だからこそ、冷静で客観的な思考ができ、情報に基づいて論理的に考える能力が必要です。

秘密を厳守できる

人事は、多くの機密情報を扱うため、秘密保持が必須です。採用活動では応募者の個人情報に接し、従業員の評価データや個人情報を扱うこともあります。これらは絶対に外部に漏れてはならない情報です。

企業にとって、情報の漏洩は信用失墜を招く可能性があります。だからこそ、人事担当者は個人情報や会社の情報を厳重に管理し、業務上得た情報を外部に洩らさないようにする能力が求められます。

観察眼が優れている

人事の業務は、採用から育成、そして人事評価まで、人に密接に関わるものが多いです。ですから、人と接するのが好きであることがまず必要です。その上で、各従業員の情報を正確に把握し、その人間性を理解するための観察力が求められます。

たとえば、「ある従業員が退職を考えている」という情報を早めに察知し、適切な部署への異動や昇進などの対策を講じる能力は、企業にとって非常に重要です。

未経者から人事への転職を成功させるためのポイント

未経験から人事への転職を成功させるには、これまでの経験や考え方をベースに、効果的にアピールすることが鍵となります。前職での成果は、あなたの人間性を示す良い材料ですが、それをそのまま伝えるのではなく、人事職に必要な視点でアピールすることが大切です。

会社目線で納得感のある明確な志望動機を作成

未経験者が最初に認識すべきは、人事は営業や企画とは異なり、具体的な事業部門ではなく管理部門であるということです。管理部門は、即時の売上を追求するのではなく、企業全体の発展と利益最大化を目指します。

だからこそ、志望動機を語る際は、企業全体の管理に貢献できる点をアピールすることが必要です。たとえば、自身のマネジメント能力をアピールする際は、過去のプロジェクトでどのように部下の成長やスキルアップを目指し、それを実現したのかを具体的に述べると効果的です。

コミュニケーション力の高さをアピールできるような根拠を提示

コミュニケーション能力をアピールするときには、人事職で重視される種類のコミュニケーションスキルを理解しておくことが重要です。

人事のコミュニケーションでは、説得力よりも調整力が求められます。相手の話を丁寧に聞き、その考えや感情を上手く引き出すことが必要です。したがって、チームの調和を保つ役割を果たした経験や、意見が異なるメンバーを統一した経験は、大きなアピールポイントになるでしょう。

たとえば、「異なる部署からメンバーを集めてプロジェクトを成功させた」や「クライアントの課題を見つけ出し、効果的な解決策を提案した」などのエピソードが良い例になるでしょう。

人事の仕事と親和性のある過去の経験やスキルをアピール

前職での経験や成果を挙げる際には、それが人事職にどのように役立つかをアピールすることが重要です。これは、「人事の職務内容を理解している」というメッセージを伝える効果もあります。人事職の主な業務である採用、育成、評価に関連する経験があれば、積極的にその点を伝えましょう。

たとえば、営業として面接を行った経験、インターン生のOJTを管理した経験、新入社員向けのマーケティングセミナーを担当した経験などは、高く評価されるでしょう。人事の職務内容に直結する経験を提示することで、未経験者でも人事職で活躍できる可能性を印象付けることができます。

人事で活用できる資格を取得する

人事は特殊なスキルと専門知識が求められる職種であり、そのため転職活動では、専門的な知識や実務経験が重要視されます。未経験者にとってはこれが大きな障壁となりますが、それを補う方法の一つが、人事職に有用な資格の取得です。

資格の取得を目指して学ぶことで、人事の仕事に必要な具体的な知識や法令理解を深めることができます。未経験者は、最低でも資格取得のための学習を進めていたり、関連する講座を受講するなど自己投資を行うことが推奨されます。

採用担当枠を狙う

人事の中でも、採用担当は相対的に入りやすい分野と言えます。LinkedInなどのソーシャルメディアを使ったリクルーティングが普及する中、優秀な求職者とのネットワークを築く能力が採用担当にとって必須となっています。

近年では、伝統的な人事の知識や経験よりも、SNSを通じた広範な人脈が評価される傾向にあります。また、人材採用には応募者の能力や適性を客観的に評価するスキルが求められます。そのため、営業や企画、製造業界でのチームリーダー経験などは、すぐに貢献できる力として評価されることもあります。

人事への転職で有利になる資格

未経験者が人事への転職を考える際、有利な要素となるのが人事関連の資格です。資格を取得するための勉強や研修を受けることで、人事業務に必要な知識やスキルを身につけることが可能です。資格取得への取り組みは、あなたの積極性や学習意欲を示すアピールポイントにもなります。

社会保険労務士

社会保険労務士は、社会保険や雇用保険の手続き、労働法に関する全般的な知識を有する国家資格です。全国社会保険労務士連合会に登録すれば、企業や個人からの相談を受け、手続きを代行することが可能です。この資格は社会保険の専門家であるため、企業の人事部門での活動にも大いに役立ちます。

社会保険労務士は、労働に関する法規制に詳しいため、就業規則や雇用契約書の作成なども任されることがあります。未経験者でも、この資格を持つことは人事への転職においてプラスに働くでしょう。

参考:社労士試験の難易度|仕事内容や年収・やりがい・将来性について詳しく解説

キャリアコンサルタント

キャリアコンサルタントは、学生や求職者、在職者に対して、就職や転職などのキャリア形成についてのカウンセリングやアドバイスを提供する専門家です。

キャリアコンサルタントも国家資格であり、厚生労働省認定の養成講習を修了し、国家試験に合格して登録する必要があります。この資格は2016年4月に新たに設けられた比較的新しいものです。

人事業務には、採用活動や人材育成などの業務が含まれます。キャリアコンサルタントの資格を持つと、これらの業務において、採用戦略や研修・教育プランの作成などに役立つでしょう。

人事総務検定

人事総務検定は、人事と総務の専門的な法律知識と実践的なスキルを評価する民間資格です。この資格は一般社団法人人事総務スキルアップ検定協会が主導し、LECが運営しています。

1級検定では、経営戦略、人事評価、就業規則、労働法、労働基準法、社会保険法などの関連法規の理解が試されます。1級資格を取得した者は、人事業務の多岐にわたる範囲、つまり、人事、労務、保険、法規制の各領域でのスキルと知識を総合的に習得したと認識されます。

ポイントを押さえ、未経験から人事への転職を成功させよう

未経験からの人事への転職は難易度が高いかもしれませんが、それを実現した人々も多くいます。未経験でも、人事に必要なスキルや知識を習得し、資格を取得することで、実務経験のあることを示せます。

また、人事職に適した特性は他の職種でも育てられるものもあります。特に、前職での管理経験やチーム作りの経験がある人は、人の見方やコミュニケーション能力を評価されるでしょう。

転職成功の鍵は、求人企業の特性や必要なスキル、求められる性格を理解し、自己分析を深めることです。自分を求められる人材として魅力的に表現するのが重要です。

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株式会社WARC HRtech CSマネージャー 栗田 謙人

2021年にSYNCAのカスタマーサクセスとしてWARCにジョイン。コーポレート領域に特化し、求職者の転職支援から企業の採用支援の双方に従事し、BizDevとしても機能の企画立案などに携わる。