従業員の本音を引き出す|人事面談の質問例と避けるべき質問
「人事面談では、どのような質問を用意すればいいのだろう?」「従業員のモチベーション向上に役立つ人事面談のポイントは?」上司や人事担当者が、従業員と定期的に話をする人事面談ですが、その目的や質問内容、ポイントを知らないと効果的ではないでしょう。
本記事では、人事面談の質問例も交えながら、効果的な面談の方法を説明します。
- そもそも人事面談とは
- 人事面談の目的とは
- 人事面談の質問を考える際に意識すること
- 目的に合った質問をする
- 具体的な回答ができる質問をする
- 相手の話を聞くだけでなく、フィードバックもする
- 「話すことはない」と言われないように話しやすい雰囲気を作る
- 質問は事前に準備する
- 今の業務に対して、不満な点・改善してほしい点はありますか?
- 今後、どのようなキャリアアップを考えていますか?
- もし今後のキャリアについて悩んでいることがあれば、相談できる人はいますか?
- 最近、仕事でうまくいかなかったことや課題はありますか?
- 過去に取り組んだプロジェクトで、自分がやりたかったことはありますか?
- 今後取り組みたい業務やプロジェクトはありますか?
- プライベートに関する質問
- セクシャルハラスメントや差別に関する質問
- 挨拶とアイスブレーク
- 現状の確認
- 問題点や課題の把握
- 解決策の提案
- 相手に合わせた質問やアプローチの工夫をする
- フィードバックを明確にする
- ゴールを共有する
- 聞き上手になる
- 記録をしっかりとる
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そもそも人事面談とは
人事面談とは、人事担当者または上司が従業員と定期的に実施する面談。従業員の管理や資質、長所の分析による能力開発に向けた施策の一つです。
面談形式で行うことにより、普段の業務への取り組みや成績などでは見えてこない、従業員の意見や考えを把握することできます。業務での悩みや改善点、将来へのビジョンや、仕事へのスタンスなどを知ることで、従業員の能力をさらに活かす方法やそのために整えるべき環境を考えることが可能です。
定期的に人事面談を実施することにより、お互いの意思疎通をスムーズにでき、個々の従業員の性格や志向をより深く理解することができますので、人材育成や、適材適所の人員配置などに役立ちます。
人事面談の目的とは
人事面談の目的は、従業員の資質や性格を把握し、理解を深め人材育成に活用することです。普段の業務では言えないことや感じていることを、きちんと聞くことで、従業員のモチベーション向上にもつながります。
人事面談により、面談担当者は従業員の将来をどう導いていこうと考えているかを詳しく伝えることができますし、従業員の側も普段は言えない仕事の進め方への異論や不満を、上司や人事に伝えることができます。従業員と上司・人事との間で、誤解や不理解を減らせますので、モチベーション向上や業務効率の向上につながります。
また、ワークライフバランスの改善やキャリアアップの支援に結びつけることも、期待できます。
人事面談の質問を考える際に意識すること
人事面談では、従業員が考えていることを詳しく聞くことが大事です。その際、質問項目は大きな鍵を握ります。面談の効果を最大化するためには、戦略的に考え、意識して質問内容を考えるようにしたいものです。
目的に合った質問をする
人事面談では、面談する従業員一人ひとりの状況に合わせて面談の目的を設定し、そのために最適な質問を考えることが重要です。
たとえば、対象の従業員が、業務に対するモチベーションが低下していると見られる場合には、その原因は何か、どうすれば改善可能なのかを考えることが目的になります。モチベーション向上を目的とする場合は、「将来のキャリアプランをどう考えているか」や「リーダーシップについてどう考えているか」という種類の、従業員がしっかり考えながら回答するタイプの質問が適当です。
具体的な回答ができる質問をする
人事面談では、今後の人材育成やキャリア形成の方向性を決めるために、従業員の考えていることを引き出す必要があります。そのために、YESやNOで回答できるクローズドクエスチョンではなく、従業員が自由に考えて回答できるオープンクエスチョンを選択しましょう。
たとえば、従業員自身がうまくいかなかったと思う内容を聞き、そのあとに、「どうすれば良かったと思うか?」「同じ状況になったらどうしたいか?」を聞く、という流れで質問を組み立てることも有効です。このように、段階的に質問することでより具体的な回答を得ることができます。
相手の話を聞くだけでなく、フィードバックもする
面談担当者は、従業員の回答に潜んだヒントを発見し、掘り下げ、従業員自身が改善点や注意点に気づくように仕向けましょう。
そのためには、回答に対する適切なフィードバックが大事です。従業員の回答から、良かった点、足りなかった点を指摘し、次回からどうすれば良いかを自覚することができるように誘導するのです。
フィードバックのために、面談担当者には、相手に「気づき」を与えるテクニックがなければなりません。積極的にポジションを取りにいく仕事の仕方に気づかせたり、会議の一つひとつでバリューを出すことの重要性を伝えたり、適切な誘導が大事なのです。そのために、面談担当者は、人材育成、リーダー育成について、深く学んでいる必要があります。
「話すことはない」と言われないように話しやすい雰囲気を作る
人事面談では、上司や人事など面談担当者の表情や態度が固いと、相手に過度な緊張を与えてしまうこともあります。また、関係が良好な上司が担当する場合は、普段のミーティングの力関係を引きずってしまうなど、人事面談にそぐわない雰囲気になることも懸念されます。
従業員にリラックスして面談に望んでもらえるように、最初は雑談を入れるなど雰囲気づくりをすることも大切です。また、従業員が話した内容を一切さえぎらず、否定せず、最後まで傾聴するスタイルをとりましょう。
質問は事前に準備する
面談の質問は、その場のアドリブで行うのではなく、しっかりと質問を準備して臨みましょう。一人ひとりの従業員によって面談の目的は変わるので、個別に質問内容を考えることも大切です。
また、面談の流れや回答の内容によって質問が変化することも計算し、いくつかのシナリオを用意しておくことも大事になります。面談の数日前までに、面談の主要な目的、質問の内容を、従業員に伝えておくと事前に考える時間を与えることができますので、より効果的です。
人事面談で従業員の本音を聞き出す質問例
それでは、人事面談で、従業員から深い本音を引き出すことができる質問とは、具体的にどのようなものでしょうか。本音を引き出し、育成や評価に役立てるためには、面談担当者もしっかりと成果をあげる根拠をもって質問を組み立てる必要があります。
今の業務に対して、不満な点・改善してほしい点はありますか?
従業員が、業務や役割に戸惑っていて十分な成果を出せていない場合は、ストレートに不満な点や改善して欲しい点を聞くことも効果的です。ある従業員が思ったより成果が出せていない時は、多くの場合、モチベーションの低下が原因でしょう。
問題は、どうしてモチベーションが低下するのかです。従業員が、何にどう不満なのか、何を改善して欲しいかを傾聴し、対処について深く議論しましょう。それにより、チーム全体が能力を発揮しやすい環境に変えることが可能です。
今後、どのようなキャリアアップを考えていますか?
従業員それぞれのキャリアプランを把握しておくことは、上司・人事には大切なことです。成績が良く優秀な従業員でも、プレイヤーに徹したいという考えの人もいれば、すぐにでも係長・課長になりチームを率いたいと考える人もいるでしょう。
また、営業職から事業企画、マーケティングに移りたいと考えている人もいると思います。
面談担当者は、それらのキャリアアップのビジョンを傾聴し、適切なアドバイスを与えられるようにしたいものです。
もし今後のキャリアについて悩んでいることがあれば、相談できる人はいますか?
対象の従業員に、なんでも相談できる相手がいるかどうかはモチベーションの維持やキャリアデザインの上で重要です。
従業員が考えるキャリアには、転職や独立も視野に入れているものもあります。そのような場合、社内で相談する相手はあまりいないでしょう。
面談者の態度は、「従業員の味方」です。その信頼がないと、面談で本音を引き出すことはできません。キャリアの悩みに、最適なセミナーや講座を勧めることができたり、それを支援する社内制度に推薦したり「味方」として動くことで、優秀な従業員も孤立せずに、キャリアアップを考えることができるようになります。
最近、仕事でうまくいかなかったことや課題はありますか?
業務やプロジェクトでは「うまくいかなかった」と本人が自覚している内容にこそ、成長のきっかけがあります。失敗の要因や、自分の課題を自己分析させ、改善方法についての「気づき」を与えることができます。
この質問に対する最初の回答には、面談者は、それが本質的な理由なのかどうかをしっかりフィードバックしましょう。本人が気づいていない課題がある場合は、それに気づく誘導が必要です。自分が過去に経験したことなどを例にあげながら、自力で気づかせ、改善方法を発見させるところまでを想定して、この質問をするようにしましょう。
過去に取り組んだプロジェクトで、自分がやりたかったことはありますか?
理想的な組織は、自分からプロジェクトや業務に手を挙げて、ポジションをとっていく人たちの集まりです。従業員の持つ積極性やリーダーシップを知る上でも、この質問は有効です。
他の人が取り組んでいるプロジェクトを傍目でみていると、さまざまな改善点に気づきやすいものです。ですので「自分ならもっとうまくできる」という意識が、従業員に生まれやすいのです。
取り組みたかったプロジェクトを聞き、その従業員ならば、どのように推進できるか、効果を上げることが可能かを聞くことで、彼が、どの程度事業推進を理解し、リーダーシップを取れるかを理解することが可能です。
今後取り組みたい業務やプロジェクトはありますか?
こちらの質問も、従業員のリーダーシップと志向を聞き出すのに役立ちます。他人が取り組んでいる業務をどのように評価しているかがわかるからです。質問をさらに進めると、改善すべきポイントなど、その従業員が考えている指摘を聞くことができます。
面談担当者は、その指摘が適当かどうかを判断しながら「こういう場合もあるよね、そのときどうする?」というように、その先のスタディに発展させることが可能です。
このように、具体的な業務やプロジェクトについての質問は、従業員の本質的な仕事への取り組み方、バリューの出し方、リーダーシップについて知ることができますので、今後の育成や組織内での役割の与え方に、大変有効な判断材料をもたらしてくれます。
人事面談で避けるべき質問ジャンル
従業員の本音の部分を深く聞き出すことで、人材育成やモチベーションの向上を実現するために行う人事面談ですが、避けるべき質問内容があります。本質的なところを聞き出そうとするために、ついしてしまいそうな質問ですが、企業のコンプライアンス上も問題になりますので、絶対に避けましょう。
プライベートに関する質問
人事面談は、仕事についてヒアリングするものです。プライベートな質問については、不快感を持つ従業員もいますし、面談担当者が気づいていなくても圧迫的な面談につながる内容もあります。
たとえば、趣味、家族のことや住宅のこと、休日の過ごし方などです。相手がコミュニケーションに長けていると適当に取り繕うことができてしまい、良い面談になっていると勘違いしてしまいますが、根掘り葉掘り聞かれることに抵抗のある従業員もいます。
最寄駅が近いことや、趣味が似ていることなども圧迫面談と取られる場合がありますので、アイスブレークの際などでも、プライベートに触れることは避けてください。
セクシャルハラスメントや差別に関する質問
さすがに、身なりや顔の美醜などセクハラになる質問は面談担当者はしないと思いますが、たとえば、結婚や出産についての話題もセクシャルハラスメントに認定されますので、しないでください。男性社員に対しても同様ですし、性の多様性が認められる風潮のなか性別に由来する質問は絶対に避けるべきです。
また、国籍や出身地、親の職業など、本人に責任のない内容については、話題にすることが差別ととられることも多いです。
面談の対象は、あくまでも本人、それも会社の業務や役割に関するものだけですので、その点に細心の注意を払い質問をしましょう。
人事面談を進める流れ
それでは、次に、人事面談を行う際の基本的な流れを説明しましょう。人事面談は、面談する従業員から、現状抱えている悩みや問題を聞き出すために行うものですので、話しやすい環境を整え、順を追って話を聞くようにしましょう。
挨拶とアイスブレーク
面談はあらたまった機会ですので、相手は緊張しています。面談の最初はアイスブレークとして、雑談からはじめて、距離を縮めて話しやすい空気感を作りましょう。表情などにも気をつけ、にこやかな感じで迎えると、従業員も安心します。
雑談が難しいときは、従業員に対する感謝の言葉や、最近の働きの成果を褒めると効果的です。「〇〇プロジェクトでは、ポジションとってましたよね」「いつも会議で積極的に発言していますね。そういう取り組み方が一番大事です」など、就業態度や積極性を褒めることで、ちゃんと見てくれていることが従業員に伝わり、二者間に信頼感が醸成できます。
現状の確認
まず、従業員が取り組んでいる業務内容やプロジェクトの現状を確認する質問をします。
普段の業務で感じていることや不安に思っていること、参加しているプロジェクトの進行状況などを自由に語ってもらうのが良いでしょう。
業務とどのように取り組んでいるか、参加しているプロジェクトにやりがいを感じているかなど、仕事に対する取り組み方と、それをどう感じているかを知ることができます。
問題点や課題の把握
現状が理解できたら、次に、それらの業務やプロジェクトで、自分自身で気づいている課題や問題点を聞き取ります。対象の従業員が、自分自身の課題をどの程度把握しているのか、それが業務にどう影響しているのかがわかるまで話を聞きましょう。
課題と問題点についての話をもとに、面談担当者はその場で内容を書き取りながら、解決が必要な業務に対する態度やスキル、ノウハウなどを整理することが大事です。
解決策の提案
問題点と課題が整理できたら、面談担当者は、従業員の意見を取り入れながら一緒に解決策を考えるプロセスに移ります。ここで重要なのは、相手が自主的に気づくように誘導することです。
面談担当者は、自身の経験や事例をもとにヒントを与えつつ、「どうすれば解決するか」を従業員に質問してみましょう。面談担当者が課題を整理してあげることで、従業員は、解決策に辿り着きやすくなります。今後の改善目標を自分自身で見出し、実行することがゴールですので、じっくり考える時間を与え、その後、従業員が改善しようとする取り組みをしっかりと支援していきましょう。
人事面談を成功させるためのポイントや注意点
人事面談は、従業員の成長やモチベーション向上を目指すものですので、注意すべきことや成功させるためのポイントがあります。面談を担当する人事または上司は、人材育成の一環であることを意識し、その知識とノウハウをもとにテクニカルに取り組む必要があります。
相手に合わせた質問やアプローチの工夫をする
従業員は、それぞれ資質や経験、スキルが違いますので、一人ひとりに個別のアプローチをしなくてはなりません。リーダーシップを発揮している従業員、指示待ち傾向がある従業員など、今後の成長に向け、それぞれが抱える課題は異なります。
ですので、面談の目的は、優秀な人材をより高いレベルに成長させることだったり、業務に向かう姿勢について気づきを与えることだったりします。面談する従業員の特性や得意なこと、資質を、事前に分析し、質問内容を考え、十分な準備をしましょう。
フィードバックを明確にする
面談は、従業員に気づきを与え成長を促すものですので、面談担当者は明確なフィードバックをする必要があります。面談後に従業員に迷いや不安を与えないためです。従業員の話を最初から最後まで肯定的に傾聴し、一緒に対応や解決を考えるためのフィードバックを丁寧に行わなければなりません。
フィードバックを具体的にするとともに、今後の改善や解決を支援する心づもりをしっかり伝えることで、対象の従業員の成長に役立ちます。
ゴールを共有する
面談の後半では、従業員の成長に向けた今後の目標について話し合いましょう。あくまで、対象の従業員が自主的に考える目標をもとに、ゴールを設定・共有することが大切です。
上司や人事の担当者は、従業員が無理なく達成できるかどうか判断し、互いに納得感のある方向づけをしないと、後々従業員を追い込むことになりかねませんので注意が必要です。
ゴールを共有し、その後のスキルアップ施策や育成計画を一緒に考え、適切な助言を行うことで、従業員が次のステップに前向きに取り組んでもらえることを目指しましょう。
聞き上手になる
人事面談では、従業員の話を遮らずに最後までしっかりと聞く「傾聴」の姿勢が必須です。質問への答えを相手の味方としてしっかりと聞くことが求められるのです。従業員の話に真摯に向き合い、気持ちや悩みを理解しながら面談を進めましょう。相手が言い足りていないことを察知したら、言いやすいように追加の質問をしたり、肯定の言葉をかけるのも大事です。
話している途中で意見をしたり、面談担当者の側が一方的に話したり、話の内容を否定したりすることは、質問に回答しようという前向きな姿勢を挫くことになりますので禁物です。
記録をしっかりとる
人事面談の内容を、その後の育成やスキルアップに役立てるために、面談の内容はきちんと記録しましょう。その際、従業員が抱えている悩みや問題を箇条書きにし、それぞれのポイントに対し次のステップを記します。互いに共有したゴールを確認できるようにし、実現のためにフォローしなければならない内容もメモすることが大事です。
一人一人の従業員についてのメモを管理し成長をサポートすることが、面談担当者の役割になります。
従業員から本音を聞き出せる質問で、人事面談を成功させよう
人事面談は、人材育成やモチベーション向上、会社へのエンゲージメントの強化を目的とし、従業員の本音の話を聞き出しながら、一緒に問題解決を目指すものです。
従業員の話を聞き出すためには、適切な質問の設計が必要です。また、話の聞き方にもテクニックが必要で、従業員の話を遮らずに最後まで傾聴すること、親身になり改善点や挑戦を支援する姿勢が求められます。
人事面談の担当者には、人材育成の知識と技術が必要になります。従業員がやりがいを感じ、次のステップに向けた成長が実現するきっかけを作る理想の人事面談ができるように、人事や上司もしっかり学習して臨みましょう。
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2021年にSYNCAのカスタマーサクセスとしてWARCにジョイン。コーポレート領域に特化し、求職者の転職支援から企業の採用支援の双方に従事し、BizDevとしても機能の企画立案などに携わる。